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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
二章   龍篇
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怒り

 多い。

 僕の想像するボディーガード業の十倍は敵が多い。


 あの後僕は、ミアさんにキャリーバッグを渡して羽団扇と、小さな爆発を発生させる札を数枚。

 あとはこの身のみでポールさんの護衛をしているが、敵の量が多すぎるのだ。


 屋上から室内に入り、その後ポールさんは社長室に籠って仕事を熟すが、その間五分事に敵襲がある。


 大半が銃などを装備した普通の人間だが、たまに妖や術師が混じっている。

 今のところ雑魚ばかりなのが救いだが、それに油断した頃に突然強い術師が現れないとも限らない。


 室内にはなるべく傷をつけないでくれというポールさんからの要望もあったので、銃弾や妖術等の遠距離攻撃は細心の注意をして処理している。


 時には斬り落とし、時には風で勢いを殺し、方法はその時々だ。


「ねえ、ポールさん。一つ違和感があるんですけど聞いてもいいですか?」


 言うと、ポールさんは仕事の手を一度止めて、こちらに目をやる。


「なんだい? 私で答えられることならば出来る限り答えよう」


「さっきから敵がドアから入ってくるのって、変じゃないですが?」


 僕は尋ねた。

 そう、先程から襲撃者は皆、壁を破壊したり、天井や床を突き破ったりはせずに、正々堂々と礼儀正しくドアから入ってくるのだ。

 僕はそれが不思議でならない。


「ああ、それなら簡単さ。このビルの壁の中には、隙間なく九尾苑の作った札が貼ってあってね、よほど腕のいい術師が来ない限りは傷一つつかないんだ」


 そう言って、ポールさんはいつのまにか手にしていた拳銃を壁に向け発砲して見せる。


「このとおり、銃程度じゃ傷もつかない」


 僕は壁に当たって潰れた弾丸を拾いながら、ならば必要以上に斬り落としたりする必要はなかったのではと思う。


「僕もちょっと試してみてもいいですか?」


 言って、音を立てず背後に迫る妖を壁に向かい蹴飛ばす。


「おお、頑丈」


 予想以上に頑丈だった壁に少し驚いていると、背後から扉が開く音と同時に大量の発砲音。


 風で防いでから目を向けると、そこには見覚えのある顔。


「貴様、何故ここにッ!」


 そう言ったのは相手の男。

 彼は以前取り戻した記憶で僕を襲った男だ。


 男は即座に銃を捨て、ナイフを構える。

 こちらに向かい駆け出すかと思ったが、男はナイフをこちらに投擲。

 あまり速度がないので目前で受け止めて、投げ返そうとする。


「これは、不味いね」


 ナイフには、小型だが爆弾らしきものがついていた。

 ナイフを即座に宙に投げ、そして羽団扇の鋒を向ける。


「四方風印」


 言った瞬間、ナイフと小型爆弾の周りに風が発生して、直後に起動した爆弾の被害を完全に無力化する。

 完璧だ。


「器用な真似をッ!」


 そう言って、男は今度こそこちらに駆ける。

 僕は男が間合いに入るのと同時に羽団扇を一閃するが、男は身を屈めて回避。

 即座に攻撃体制に移り、身を回転させながらこちらに勢いよく蹴りを放つ。


 それに対して、僕は蹴りを殴って勢いを殺すが、次の瞬間には男は殴った腕に足を引っ掛けて、そこから跳び上がる。


 そこから男はナイフを三本投擲。

 僕は全てを弾いてから四方風印で囲み、爆発の威力を完璧に殺す。


 ナイフを投げた直後ほんの僅かに隙が出来た男目掛け、羽団扇を振るう。


 刃は腕での防御を切断し、その先にある胸部まで切断する。


「龍の怒りに触れて、生き残れると思うなよ!」


 男は息絶える直前、残った力を振り絞って叫ぶ。

 その声と表情に嘘はなかった。

 男は本気で、かの有名な龍という存在についてなにかしらの情報と、僕に対する謎の怒りを知っているのだ。


「さて、彼の言う龍とはどの龍だろうね」


 そう、ポールさんが九尾苑さんと似たような口調で言うのだ。

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