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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
二章   龍篇
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暴風

 離陸してからどれほど経っただろうか。

 会話など何もないただ気まずい空間で長時間呼吸のみを続けて時間の概念を忘れはじめた頃、ヘリはビル街にある内一つの高層マンションの屋上にあるヘリポートに着陸する。


「あの、ここはいったい」


『ここはポール・デュ・ボルフォート様がお買い上げなされた職場兼ご自宅でございます』


 ミアさんは強風で長い髪を靡かせながらモニターを見せる。


 髪を靡かせるといっても、額縁に収めたいような絵面ではない。

 バサバサと、暴風で髪が今すぐ飛んでいってしまいそうな勢いだ。

 顔も髪で隠れ見えなくなっている。

 この暴風の中ミアさんは立っているのもやっとなようで、足を大きく広げて相撲取りのような体制で踏ん張っている。


 ミアさんの体とパソコンを支えてると、その直後に屋上に聞き覚えのある声が響く。


「早く中に!」


 瞬間、僕はシルさんを抱えて声の方に飛ぶ。

 風であまり跳べないが、そこは三日経って回復したての妖力を羽団扇に集めて、自分も風を防ぐ風を作り出すことで解決した。


「ありがとうございます、ポールさん」


 そう、声の主はシルさんの主人であり今回の仕事の雇用人。

 ポール・デュ・ボルフォートその人だったのだ。

 ポールさんが居たのは屋上からビル内に降りる階段側で、屋上では唯一風から逃れられる室内だ。


「もう一人、ヘリに居ますよね?」


「ああ、あのヘリの操縦士であるシルがいるよ」


 名前が同じ?

 何か深い事情があると僕の直感が騒ぐが、今は無視だ。


「助けて来ます」


「いや、いいよ。ヘリの中にいれば安全だろうし、風もしばらくしたら止む」


「いや、行ってきますよ」


 言って、地を蹴り駆ける。

 跳ぶのは効率が悪いのはもう分かったので、今度はちゃんと走る。

 ヘリに辿り着くと同時、風で強く押さえつけられた扉を力ずくで開き、もう一人のシルさんを抱き抱える。


「舌噛まないように気をつけてくださいね」


 言うと同時に僕は扉を閉めて行き以上の速度で駆ける。

 帰りは追い風だから走りやすい。


 室内に戻り、僕は胸元を強く掴むシルさんを下ろしてから自分のキャリーバッグを取りにもう一度往復する。


「お待たせしました。昨晩ぶりですね、ポールさん」


「ああ、昨晩ぶり。来てくれて嬉しいよ」


 そう言ってから、ポールさんは僕から視線をキャリーバッグに逸らす。


「その荷物は?」


「荒木寺さんに持っていけと言われまして」


「彼も私のことをわかって来たね。準備があるなら丁度いい、何泊かしていくといいよ」


「それじゃあお言葉に甘えて」


 そう言って、一礼。

 これから、僕の人生初かもしれないボディーガード業が始まる。

今回起こったこと。

ヘリから降りた。

以上。

これだけ覚えればこの話はスルーしても平気。

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