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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
二章   龍篇
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展開はいつも唐突に

 荒木寺さんたちは、あっさりと承諾してくれた。

 どうやら荒木寺さんと猫宮さんは以前にもポールさんに会ったことがあるらしく、九尾苑さんの親友だということを知っていたらしい。


 なんから来ることも事前に聞いたと言っていた。

 何故教えてくれなかったのかと聞くと、反応が面白そうだからとのことだ。

 おかしい、僕はいじられ担当ではないはずだ。


 そんなこともあり正午、ポールさんの言った通り部下の人がやって来た。

 メイド服を着た大人っぽい女性だ。

 メイド服には驚いたが、それよりも店の扉から少し離れた位置にヘリコプターが止まっており、お金持ちの移動手段に驚いた。


「こんにちは」


「……………」


「えーっと、あれ?」


「……………」


「何か気に障ることでも?」


「……………」


 困った、全く喋ってくれないぞこの人。


「誰か助けてくださいよ」


 困り果てて呟くと、ヘリからもう一人女性が降りてくる。

 その女性は目の前のなかなか喋らない彼女にパソコンを手渡すと再びヘリに戻る。


『はじめまして、私はポール・デュ・ボルフォート様の使用人であり貴方の案内人。ミア・オートドールです。ミアとお呼びください』


 モニターに表示された文字を読み終えると、自らをミア・オートドールと名乗った彼女はスカートの裾を両手で少し持ち上げて、洗練された動きで頭を下げる。


 ああ、このミアって人濃い。

 理由は分からないが喋らないし。

 恐らくこの人は、周りが手を焼くタイプのお間抜けさんなのだ。


 現に今、ミアさんはスカートの裾を掴む際パソコンを完全に手放し、僕が空中でキャッチしなければ壊れるところだったのだ。


 僕がミアさんにパソコンを手渡すと、流暢な動きでパソコンに文字を打ち込みはじめる。


 その姿はとても仕事が出来る女性というイメージにピッタリ当てはまるのだが、いつパソコンを落下させるかが心配でならない。


 しかしそんな僕の心配を裏切り、ミアさんはパソコンを落とすことなくモニターを再び僕に向ける。


『昨晩のお返事をいただきに参りました。答えは決まりましたでしょうか?』


「ええ、お話いただいた仕事は受けさせてもらうと思います。店員とも話しました」


 では、着いて来てくださいと表示されているモニターを僕に見せたミアさんは、パソコンを落とすことなく抱いたままヘリに乗り込む。


 着いて行くにしても、店の皆に報告したい。

 だがミアさんはモニターに表示される文字をこちらに向けたまま点滅させて僕を急かす。


 困っていると、突如背中を叩かれる。


「行ってこい。店のことは任せとけ」


 そう言ったのは荒木寺さんだった。


「あいつのことだ。長引くはずだがらこれもってけ」


 そう言って荒木寺さんが僕に渡したのは一つのキャリーバッグ。


「え、これって泊まりのときとかに使うやつじゃ」


「どうせポールのことだ。何日か泊まり込んでみねえかと聞いてくるだろうさ」


 本当に唐突だ。

 だがここまでの流れでポールさんは全てが唐突だった。

 急に泊まり込みで働かないかと聞かれても違和感はない。


「えっと、じゃあありがとうございます」


「礼なら帰って来てから沙耶と猫宮に言え。準備したのはあいつらだ」


 二人も知ってたのか。

 本当になんで僕だけには教えてくれなかったのか、不思議でならない。


「じゃあ、いってきます」


「おう」


 そう一言告げて、僕はミアさんの乗るヘリに乗り込むのだった。


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