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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
二章   龍篇
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死別

 

「まずは何を話すにしろ自己紹介からだ。私はポールという、よろしく」


 二人で店の奥にある座敷に座ると早々かれはポールと名乗る。

 そんなどこかで聞いたような自己紹介に思わず笑ってしまうと、ポールさんは不思議そうな顔をする。


「どうしたんだい急に笑って。何かおかしなことでも?」


「いえ、自己紹介が九尾苑さんと全く同じだったもので。つい」


 言うと、ポールさんの表情は昔を懐かしむような感慨に満ちた表情を見せる。


「そうか、あいつも変わらなかったんだな」


 少し震える声に、僕は思わず声をかける。


「もしよければ、会いますか」


 もう九尾苑さんは喋らないが、それでもポールさんにはぜひ会ってもらいたい。


「ああ、出来ることならば会いたい」


「案内しますよ、どうぞ」


 言って、立ち上がってポールさんを九尾苑さんの私室へ案内する。

 着くやいなやポールさんは九尾苑さんの側に座り込み、もう冷たくなった手を握る。


 外にいますねと一言だけ告げて、部屋から出る。

 居心地が悪かった。

 とっても悪かった。

 まあ旧友と死別したのだ。

 あの二人の関係を全く知らない僕があの空間にいたところで邪魔なだけ。

 居心地が悪くて当然だろう。


 二十分も経つと、ポールは部屋から出てくる。


「待たせて悪かったね」


「大丈夫ですよ。さて、さっきの部屋に戻りましょうか」


 そう言って、再び座敷に戻る。


「そろそろ仕事の話をしよう」


「ええ、確かボディーガードでしたっけ?」


「そう、実は私は結構な有名人でね。知名度と比例して面倒な輩に狙われることも増えるんだよ」


「普通のボディーガードを雇ったりはしなかったんですか?」


「一度は考えたがね彼らじゃ無理だ。私を狙う連中の中には君のような術師も多くてね、ただの人間では到底相手できない。それに今は自分で処理しているんだけどね、最近は数が増えてきて面倒だ」


 納得の理由だ。

 まあ、九尾苑さんの知り合いなんだから強いのかもしれないが、四六時中敵を処理するのは面倒だろう。


「まあ納得はしました。とりあえず僕はその仕事を引き受けていいと思うんですけど、一応店の人にこの話を伝えなきゃなので、えっと、どうしよう」


 困った。

 今は深夜も深夜。

 誰も起きていないのでこの件の相談が出来ないではないか。


「まあ店員同士で話し合って決めて欲しい。明日の正午に今度は僕の部下をこちらに遣すから時間を開けておいて欲しい。予定はないかな?」


「多分その時間なら大丈夫な筈です」


「よかった。では、今日はそろそろ帰るとするよ。こんな時間に悪かったね」


 ポールさんはそう言って立ち上がる。

 店の前まで見送ると、そのあとは見送りは不要と言ってポールさんは森の中へと消えていった。


 このことは明日荒木寺さん達に相談するとして、今日は疲れた。

 僕は部屋に戻り、泥のように眠る。


ポールさんやっぱり徒歩で来たのかな?

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