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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
二章   龍篇
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旧友

 まあ、僕は昔から店にいたんだなってことはなんとなく気づいてたよ。

 だって、戻った記憶で僕九尾苑さんといたもん。

 でもさ、最古参って嘘でしょ。

 遺書には僕に指揮権を渡すこと以外にも従業員の働き始めた時期なんかが詳しく書いてあったけど、本当に僕は最古参らいいよ。


 まず、この店を立ち上げたのは九尾苑さん。

 次に端蔵が雇われて、その少しあとに僕が。

 しばらく経つと端蔵が商品には出来ないような妖具の本を持って店を裏切って、暫くは僕と九尾苑さんで戦ってたと。


 そのうち一つの戦いで僕が負けて、九尾苑さん一人で端蔵と戦うことに。

 ちょっとキツイから猫宮さんと荒木寺さんを雇ったと。


 生きてる中で本当に僕最古参だ。


 そんなことを思いながら、僕は話が終わってしばらく経ってからやって来た暗い森の中で歩みを進める。

 もう深夜の二時だ。

 眠いが、やらなければならないことがあるので仕方ない。


「お疲れ様でーす」


 そう僕が声をかけたのは、端蔵の死体を処理しに来てくれた骸隊の人たちだ。


「やっぱないですか、死体」


「ええ、私たち骸隊であたり隈なく探索しましたが、端蔵晴海の死体は痕跡すら残さず消えていました」


 まあ、荒木寺さんから話を聞いたときには、既にもしかしたら程度だが分かってた。

 九尾苑さんを襲った奴は、端蔵の死体を何らかの方法で利用するつもりか、端蔵の生前に既に端蔵を利用しており、その証拠隠滅のために端蔵の死体を隠したのだろう。


「それじゃあ、多分もう近くにはいませんし撤収して大丈夫ですよ」


「了解しました。前雇用主の件、おめでとうございます」


 言って、骸隊の人たちは姿を消す。

 九尾苑さんが突入前に骸隊呼び出しの登録名義を僕に変えたらしく、遺書に呼び出し方から前の雇用主が死んだ際の不謹慎な決まり文句まで詳しく書いてあった。

 あれがなければ最後の決まり文句で、僕は煽られているのかと思ったはずだ。


 実際は骸隊に伝わる世話になった死者に対する弔いの言葉で、死んだらその後は何の苦労もない世界に行くというなんとも宗教的な考えでの発言らしい。


「さて、帰るかな」


 そう一言零し、来た道を戻る。

 傷を塞いだだけの三日間妖力を使えない僕では強い術師も相手できないだろうから、残っても意味はない。


 そうして僕が店に向かい歩いていると、突如木の影から妖が一人飛び出す。


 人でも妖と人の血が混じった者でもない。

 見た目が完全に人とかけ離れている場合は、純粋な妖なのだが、このような場合は単位は人であっているのだろうか?


 そんなことを考えていると、現れたのは妖は僕に向かい火を吹く。

 なんというか、お粗末な火力だ。

 ライターよりは多少マシだが、術でライター以下なんて必要がないし、比べられる辺りもう駄目だろう。


 とりあえず炎は回避して、妖は羽団扇で斬る。


 今は身体能力を妖力で強化されてないし、羽団扇で風やら火やら出せるわけでもないが、この程度の雑魚ならば素の身体能力で倒せる。

 数ヶ月前なら無理だったかもしれないが、今の僕ならば問題ない。


「おい、様子見は今ので終わりか?」


 言うと声は森によく響き、それに反応する様に草木が踏まれる音がする。


「いつから気づいてた?」


 言いながら出てきたのは高級そうなスーツを纏った金髪で細身の外国人の男。


「当てずっぽで言ってみただけ」


 実際は森に入った頃から気づいていたが、適当なことを言って相手の反応を見る。


「真面目に答える気はなしっと。じゃあいいや、私は交渉に来たんだ」


 相手は冷静だ。

 しかもあっさりこちらの軽口も見透かされてる。


「簡単なビジネスの話だ。店の仕事の合間でいい、僕のボディーガードをしないかい?」


「ボディーガード? 突然出てきた不審者の身を守る理由が分からないね」


「九尾苑のやつに頼まれてるんだ。もし自分に何かあったら、君をサポートしてやってほしいって」


 九尾苑さんを知っている。

 術師か妖か、どっちにしろ一般人ではない。


「九尾苑にもこの仕事の誘いは何度もしていたが、あいつは普段はのらりくらりとしている癖に大事な話になると頭が硬くてね。二十年ほど誘ってはいたが結局首を縦に振ることはなかった」


 男は物悲しそうに言う。

 しかし、この口ぶりからしてこの人は九尾苑さんの旧友のようだ。

 嘘もないように思える。

 と、するとだ。

 僕の今の態度って凄く失礼じゃないか?


「とりあえず立ち話もなんですし、大事な話なら店でしましょ。お茶でも飲みながら、ゆっくりと」


 即座に敬語に切り替えて、さっきまでの態度を無かったことに。

 そうして僕は男を店へと連れて行くのだった。

二章始まって早速新キャラ出ちゃったよ

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