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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
一章   古本屋篇
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露払い

「前に仕事をなんでも一つって約束しっちまったからな、面倒臭えし癪に触るが、今日は俺がてめえの露払いをしてやるよ」


 千輝は不敵な笑みを浮かべ言う。


「仕事って、あいつらはお前と同じ一族だろ? 良いのかよ?」


「あ? 俺らは受けた仕事なら身内殺しだろうと戦争でもなんでもやる。だから、今更あいつら殺してもなんも起きねえよ」


 千輝は以前は持っていなかった刀を引き抜いて続ける。


「俺はあいつらをとっとと始末してくる。その間にお前はそこのヤツを殺せ。もう怪現(かいげん )使えんだろ? 出し惜しみしてるらしいが、お前が勝つには使うしかねえぜ」


 言って、千輝は姿を消す。

 援軍を倒しに向かってくれたのだろう。


 千輝はここに来たのは仕事と言っていたが、恐らく、というか確実に、依頼人は九尾苑さんだ。

 以前千輝が現れた際の約束を、突入前に事前に使ってくれていたのだろう。


「さて、援軍はダメそうだし、これは続行かな」


「ああ、まだまだ終わらせねえよ」


 言って、今度こそ羽団扇を振るう。

 今回は誰も急に現れはせずに、刃は端蔵の首目掛けて進む。


「狙いが安直!」


 端蔵はそう言い、身を回転させて回避。

 直後青天霹靂を放つ。


 僕はそれを羽団扇で弾き、端蔵に手の届く範囲まで寄る。

 この距離ならば、金城鉄壁を使っても端蔵と僕の間には壁が発生しない。


「先ず、一本ッ!」


 言って、僕は勢いよく刃を振り上げる。

 結果、血飛沫。

 端蔵の左腕が空高く舞い上がり、血の雨が降り注ぐ。


「よくもッ!」


 そう言う端蔵の表情は、怒りや憎悪ではなく、喜びに満ちていた。


「一の指、火遊び!」


 炎の玉を放ち、それと並走するように駆ける。

 端蔵は着ている上着の内側からナイフを二本取り出し、構える。

 僕と斬り合いでもするつもりのようだが、僕はその期待を裏切る。


 お互いの間合いが重なる直前、僕はバックステップで端蔵から離れて言う。


「一織目、爆」


 瞬間、火遊びで放った炎の玉が爆ぜる。

 狙い通り端蔵は爆発に直撃したが、指の一二本飛んでもらえると助かる。

 なんなら、喉に傷が出来て声が出なくなれば術も使えなくなって一番良いのだが—————————。


 瞬間、僕の期待を裏切って声が聞こえる。

 怪現、声消口臨( せいしょうこうりん)と、ハッキリと聞こえたのだ。


 その直後、僕が羽団扇の風で爆発の土煙を散らそうとした瞬間だった。

 青天霹靂が僕の左腕と頭目掛け飛来する。


 頭に迫る方は弾いたが、左腕は間に合わずに直撃。

 二の腕に貫通する。


「いやあ、驚いた。いつもは幾つか出す分の威力を一発に込めたね? 器用なことするねえ」


 激痛に耐え、土煙から出てきた端蔵に向かって構える。

 貫通した傷口は即座に焼いたので問題はないはずだが、先の爆発で端蔵の腕の断面も焼けたようだ。


「お互い止血はバッチリらしい。でも、片腕で平気?」


「問題ないさ。僕の術は喉さえあれば使える。しかし、それも今は必要ないがね」


 瞬間、端蔵の首付近か青天霹靂が放たれる。

 先程空からではなく真っ直ぐ端蔵のいる方向から飛んできた理由が分かった。

 僕は右腕で羽団扇を振り、青天霹靂を弾いてから言う。


「お前の怪現は、身近から放つ場合に限り、術の名を口に出さなくても良くなっただろ。違うか?」


「いや、正解だよ。ほんの二度見ただけで見極めるとは、流石だ」


 また厄介な効果なことで。

 全く、嫌な戦いだ。


「さて、再開しようか」

我ながらカッコいい技名を思いついたものだ

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