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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
一章   古本屋篇
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妖装

漫画化したらお色気回

 猫宮さんの言っていた妖力でガードを作り出す技術。

 後から詳しく聞いた話によると、妖装( ようそう)といって、その名のとおり、妖力を身に纏い重さの無い鎧として使うらしい。


 逐一相手の攻撃を風の噴射などで弾いて妖力を消費する僕の戦い方よりも、一度見に纏ってしまえば弱い攻撃は全て勝手に弾いてくれる妖装の方が効率が良いらしい。


 使い方は単純で、身の回りに妖力を集めて、高密度に固めるだけだ。


 妖力は自分から離れるほど操作しにくくなるが、身の回りだけで良い妖装は妖力操作の初歩の初歩らしい。


 しかし、そんな初歩も使う者によっては効果が段違い。

 例えば、妖力の操作を知ったばかりの初心者が作る妖装では、マシュマロを弾ければ良い方らしい。


 逆に、先生や九尾苑さん程になると、銃弾などは当然通さず、自分より遥かに格下の相手の身の回りに関節などの動きを一切考慮せず、動かないこと前提の妖装を作り出し、敵の動きを封じることも可能らしい。


 試しにやってみると、案外難しい。


 妖力を全身に広げなければいけない妖装は、妖力操作でも更に難しい一部に妖力を集める技術を先に体で慣らした僕には逆に難しいのだ。


 一部にピンポイントで一ミリのズレもなく集めた妖力を、同じ密度で全身に広める。

 これが難しいのだ。

 何度も試すが、必ず何処かしらに妖力の隙間が出来てしまう。


 途中猫宮さんや九尾苑さん、先生などにも相談をしてはみるが、こればかりは妖力を広げる感覚の話らしく、あまり収穫はなかった。


 猫宮さんはケーキのスポンジに生クリームを塗るイメージ。

 先生は風呂に入ってお湯に包まれるイメージ。


 九尾苑さんは何となくでやっているらしい。


 九尾苑さんは本当に収穫にならなかったが、猫宮さんと先生の言うことは何となく分かった。


 二人とも、表面に何かをつけるイメージなのだ。


 スポンジの表面に、肌の表面に。

 それぞれイメージは違えどその由来は同じだ。


 そらなら何故収穫があまりなかったと言ったのか。

 両方とも試したが、妖装が成功しなかったからだ。


 それぞれイメージしても、守られている感覚が分からないのだ。


 生クリームには守られないし、お湯にも守られないだろう。

 自分の想像力が貧相なのかと苦悩しながらも、僕は気晴らしと、お湯のイメージを明確化するために風呂場に向かう。


 全員が一番風呂宣言といい、この地下に設置された風呂といい、九尾苑さんの風呂に対する拘りがよくわからない。


 浴槽にお湯を溜め、その最中に体の汚れを洗い流してから浴槽に浸かる。

 湯船で胡座で浸かり、浴槽の淵に腕と頭を乗せて寛いでいると、突如脱衣所の扉が開く音。

 僕の服が別段わかりにくい場所に置いてあったはずだが、突如現れた沙耶はタオルで体を隠すどころか、胸を張って堂々としている。


 驚いた僕はお湯が口の中に入ってしまい、咳き込んでしまうまた。


「どうしたのよ、そんな初心な少年みたいな反応して」


「いやいやいやいや、それば誰でも驚くでしょうよ」


 着替えでは別に恥ずかしくも照れもしなかったが、流石にここまでだと違ったようだ。


「昔は散々見たでしょうに。付き合い始めた頃に戻ったみたいで面白い」


 沙耶は不敵な笑みを浮かべて言う。


「なんか、それ悔しい」


 僕が言うと、沙耶は僕の頭を小突く。


「そんな一丁前のことは妖装成功させてから言いなさい。聞いたのよ、コツを聞いてまわってるって」


 沙耶は絹のように白い肌に泡を広げながら言う。


「私のところに来れば、昔の一ノ瀬が言ってた使い方分かるのに。おバカさんめ〜」


 そう言われ、ハッとする。

 そうだ、沙耶なら以前の僕を知っている可能性があったのに、何故僕はそれを思いつかなかったのだろう。


 過去の自分に少しでも近づくために、僕は言う。


「沙耶、教えてくれ。

「僕が昔、どうやって妖装を使っていたのかを」

宗介に一糸纏わぬ姿を見せ慣れている沙耶。


ヌフフ

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