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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
一章   古本屋篇
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苛立ち

初の朝投稿!

「今日は一段と荒れてるね」


「ええ、最近見てた子が急に見えなくなったらしいわよ」


「ああ、僕の最新作だとか言って覗いてたやつ」


「そうそれ、覗かれてた相手はお気の毒だけど、面倒なことをされたわね」


 そう言って二人が眺めるのは、一人の少年だった。


 長いグレーの髪を無造作に纏めて、口の量端を糸で縫ってあるその少年は、何かを書き込んだノートを床に叩きつける。


「やめなさい、大事なノートなんでしょ」


 すかさず、眺めていたうち一人、深い赤紫の髪を腰まで伸ばした女が止める。


「君に分かるか、僕が急に見えなくなったんだぞ!

「自分が、急にだ!

「分からないから口出ししないでくれよ!」


 そう言って、再度ノートを床に叩きつけようとする少年。

 女は少年の目を両手で塞ぎ、落ち着いた口調で言う。


「いい? 彼は貴方じゃないの。

「貴方は貴方一人だけ。

「彼は彼だけなの。

「貴方は夢屋小豆、少しだけ他人に感情移入しやすくって、直ぐに他人を自分と思い込むだけの貴方よ」


 女が言うと、少年は落ち着きを取り戻す。


「ありがとう。

「君のおかげで落ち着いたよ」


 少年、夢屋小豆が言うと、眺めていたもう一人が声をかける。


「小豆、落ち着いたようで何よりだよ」


 小豆は慌てて振り返る。


「端蔵様、こんな所まで来て、何か用でも?」


 端蔵晴海、古本屋勇逸の裏切り者。

 そんな端蔵に向かい、小豆は嫌そうな顔で言うが、端蔵は微塵も気にしない様子で言う。


「いや、前に頼んだ準備は出来てるか見にきたんだよ」


「前に頼んだ? なんのこと?」


「ああ、やってないか。

「仕事、頼んだでしょ」


「覚えてない。

「何さ、仕事って。

「僕、働きたくなんてないんだけど。

「働かなくて良いって言ったの端蔵様じゃん。


「言ってないね。

「小豆が餓死は嫌だから雇ってくれって抱きついてきたんでしょ」


「それも覚えてないよ。

「僕、頭は良いんだから、忘れるわけがない」


「良い頭って言うのは、その都合の良い出来をした頭かい?」


 端蔵が言うと、小豆は自分の乾燥しきった下唇を噛んで言う。


「なに? 僕と喧嘩したいの?」


「いいよ、でもこの雇用関係は途切れるからね」


 端蔵のその一言で、小豆は自らの負けを認める。


「で、仕事ってなにさ?

「今なら最優先で急いであげるよ」


「ああ、今度は忘れないでくれよ」


 端蔵は一拍置いてから言うのだ。


「古本屋との全面戦争の準備だよ」

いや〜果たして小豆くんが書いたノートはどれくらいなんでしょうね

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