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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
一章   古本屋篇
35/164

三十四冊目

「助けに来たよ、宗介」


 その声の主は即座に僕から赤髪の男に視線を移す。


「おお、久しぶりじゃねえか九尾苑」


「そうだね、君たちの叔父様のところで飯をした以来かな?」


 何やら親しげな様子で二人は話している。


「宗介は今は僕の元に付いている。

「それに何の断りもなく手を出して、何のつもりだい」


 九尾苑さんが言うと、赤髪の男は何やらうんざりした様子で一度ため息をこぼす。


「悪かったな、まだ情報が流れてねえんだ。

「情報をずっと隠して、この情報を広げなかったお前にも非はある。

「今度なんでも一つ任務を受けてやるから見逃せ」


 そう言い捨てると、男はその場から去ろうとする。


「あ、言い忘れた。

「俺の名前は己龍千輝(きりりゅうちあき )だ。

「次会うまで忘れんなよ」


 言うと、千輝と名乗った男は地を蹴り勢いよく飛翔。

 遥か彼方へと消えていった。


「さて、大丈夫だったかい?」


 九尾苑さんは気を取り直したように言う。


「あいつがでる前から散々でしたよ」


 言って、僕は地下水道での出来事を説明した。

 すると、九尾苑さんはおかしなことを言い出した。


「よし、今から一緒に見に行こう」


「今からって………僕も沙耶も消耗してますし、荒木寺さんと猫宮さんが戻ってきてからの方が長期戦も出来ますよね。

「それでも今行くんですか?」


 沙耶の顔色の悪さを見て、九尾苑さんに提案をする。

 しかし、それを止めたのは沙耶だった


「大丈夫、己龍の妖力に当てられて少し消耗しただけだから。

「あそこまでの移動時間があれば回復するからあまり気を使わないで平気よ」


 そう言われ、僕も諦めて九尾苑さんに付いて行くことを決める。


 地下水道に戻ると、九尾苑さんは人差し指指を立てて言う。


「さて、授業だ。

「君たちは後で見ているだけでいい」


 すると、進む道の奥から大量の新種が現れる。


「アイツらです、近づくと破裂するので気をつけて」


「大丈夫、もう聞いた」


 そう言うと同時に、九尾苑さんは敵に向かい僕たちに渡したのと同じ白いお札を飛ばす。


「防術、双璧」


 瞬間、飛ばした札が爆発、そして九尾苑さんが出したであろう透明な壁によって、爆発の被害が自分たちに来るなんて状況も起きない。


「さあ、進もうか」


 そう言って九尾苑さんは先に進み始める。


「ねえ沙耶、僕あんまり他の人の術を見てないからわからないんだけど、九尾苑さんって強い方なの?」


 先に進む足を止めずに聞くと、沙耶が一つため息をこぼして言う。


「凄いなんてものじゃないわよ、術を呼ぶときの言葉に乗る妖力の量が一般の術師なんかと大違いよ。

「きっと彼が使えば、術師の学生達が最初に覚えるような妖力を軽くぶつけるだけの術でも人くらい難なく貫通するんでしょうね」


「ごめん、ちょっと分からないんだけど言葉に妖力を乗せるって何?」


 更に聞くと、沙耶は信じられないとでも言いたげな顔でこちらを見る。

 これが所謂ジト目というやつかなのだろうか、こんな目で見られるのは初めての体験だが、案外悪い気分はしない。


「いい? 先ず術を使うときの選択肢が二つ。

「無言で使うか、名を呼んで使うかよ。

「無言で使えば術本来の能力が、名を呼んで使えば術者次第の能力が現れるの。

「名を呼んで使うとき、術者は言葉に妖力を込めるわ、彼はそのときの量と質が他の術者とは比べ物にならないのよ」


 沙耶が説明を終えると、九尾苑さんが振り向いて言う。


「どう? 僕の凄さが分かったかい?」


 ほんの一瞬、凄いと思った。

 だが、今の一言で台無しだ。


「貴方、その性格だけ治れば顔も良いしモテると思うのよ」


「沙耶ちゃんは中々辛辣なことをいうねえ。

「もう少しマイルドな性格になればモテるよ」


「私はもう一ノ瀬って彼氏がいるのよ」


 二人が平和そのものといった雰囲気で話していると、突如として強い妖力の反応が現れる。


「一ノ瀬、気をつけて」


「大丈夫、沙耶こそ」


 沙耶の方が僕なんかより強いのは分かっているが、少し男の意地を示してみる。


「反応は良い、弟達よ、お前らもそう思うだろ?」


「私もそう思いますよ兄様、弟達もそう思うだろう」


「ああ、僕もそう思うよ。

「こいつもそう思っているはずだ」


 一人だけ何も言わないが、奇妙な四人組が現れた。

 兄弟だろうか。


「手分けして倒すぞ、弟達よ」


 見た目的に長男らしき男が言った瞬間、四人は僕達三人に向けて駆ける。


「次男の秋葉(あき )だ。

「死ぬ前に覚えておきなさい」

読んでいただきありがとうございます。

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