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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
一章   古本屋篇
32/164

三十一冊目

 橋を超え、道沿いの階段から橋の下にある堀に降りる。


 今の僕の身体能力なら橋から飛び降りた方が早いだろうが、人としてルールを守り、道を通る。


 二人で臭い臭いと言いながらも地下水道に入ると、薄いが、確かに妖力が存在する。


 これならば、雑魚が少し発生している程度だろう。


「沙耶さ――沙耶は暗いところ平気?」


「ええ、当然よ。

「そんな事より、今さん付けしそうになったわね?」


 急いで訂正した物の、沙耶は少し寂しそうな顔をしている。

 慌てて謝罪しようとするが、それは当の沙耶に遮られる。


「冗談よ、ごめんなさい。

「それにしても貴方、揶揄った時の反応は全く変わらないのね」


 悪戯な笑みを浮かべてそう言う沙耶は、警戒に関しては一切気を抜かず、背後から弾丸を放とうと、視線もくれずに回避しそうだ。


 沙耶は僕の彼女らしいが、もしかしたら僕は、記憶を奪われる前から妖に関わっていたのかも知れない。


 それならば、九尾苑さん曰く荒木寺さんに匹敵する実力者の沙耶が僕の彼女だったとしても不思議はない。

 勿論、僕の素の性格や人物像は不明な為、これは立場的な話のみで考えた話だ。


 そんな事を考えていると、突然前方から十体と少しの雑魚妖が向かってくる。


 見た目の種類から人間を襲う種類と判別した為、即座に討伐せんと羽団扇を抜く。


 相手が射程範囲内に侵入した瞬間、羽団扇を横に一閃する。


 その一閃で三体討伐。

 続けて小刀を三本投擲、内一本は運良く二体同時に刺さり、合計七体討伐完了した。


 他の妖を探すと、残りは全て沙耶が仕留めていた。


 手柄はいただいたと言わんばかりの笑みをこちらに向ける沙耶は、僕が投擲した小刀に向かい手を向ける。


 すると、壁に刺さった状態の小刀は突如、沙耶に向かい吸い込まれる様に動き出す。


 自分の顔の手前で小刀を掴んだ沙耶は、他二本も同じように自分の手を向けて、同じように掴む。


「これが私の使う術よ。

「掃除機みたいに吸い寄せるだけだけれど、中々応用が効くのよ?」


 そう言って僕に小刀を手渡した沙耶は、僕より先に地下水道をどんどん進んでゆく。


 途中何度か敵が現れたが、全て雑魚で戦闘と言えるほどの戦いは未だ皆無だ。


 雑魚との戦いを見る限り、沙耶の能力は両手で敵を吸い込む事が可能である事。

 更に、吸い寄せる事ができる範囲は、広げた手から真っ直ぐ、二十メートル程だと言う事も分かった。


 沙耶は吸い寄せる敵同士をぶつけたりして敵を倒しているが、吸い寄せる軌道線上に刃物なんかを添えても良さそうだ。


 そんな事を考えながらも、少しずつ出てくる雑魚を仕留めていると、突然沙耶の動きが止まる。


 沙耶の背後から迫る雑魚を一撃で仕留め、どうかしたのかと駆け寄る。


 すると、沙耶は突如僕を吸い寄せる。


 瞬間、僕がいた箇所の壁が破裂する。


 何事かと急いで目を向けると、破裂した箇所にはさっきまで戦っていた雑魚と少し色が違う妖が湧いていた。


「ごめんなさいね、アイツらの気配に驚いちゃって」


「大丈夫、それよりもアイツらは?」


「分からない、少なくとも日本には存在しない筈の妖よ。

「家の書物は全て暗記しているから間違いないわ」


 沙耶が少し誇らしげに自分の記憶力を自慢していると、謎の妖達が一斉に僕たち目掛け突撃する。


「絶対に直接触れないで! 何があるか分からないから出来るだけ離れて攻撃を!」


 お互い逆方向に飛んで敵を回避しながら僕が言うと、沙耶は無言で頷き、吸い寄せられる範囲ギリギリから妖同士をぶつける。


 すると、その場でぶつかった妖が破裂した。


 少し驚いたが、壁が壊れた破裂の時点である程度予想はしていたので動きを止める事は無く、妖に向かい、壁の破片を飛ばす。


 敵は何処からか増える一向だが、一体の強さはさっきまでの雑魚と変わらない。

 時間のかかる戦いになりそうだ。

読んでいただきありがとうございます。

感想などを送っていただけると、執筆の励みになりますので、何か思ったことが有れば応援でも罵詈雑言だろうが、叱咤激励も、アドバイスでも嬉しいですので、よろしくお願いします!

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