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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
一章   古本屋篇
3/164

二冊目

「お客様ですよ、店長」


 声で、扉に吸い込まれた後朦朧としていた意識が覚醒する。


 尻が痛い、吸い込まれたあと尻強くぶつけたか?


 立ち上がり、声のした方を向くと―――ダンボール箱を持った白髪短髪の大学生くらいに見える男と、店の奥の小さな座敷に座り、人差し指でメガネを掛け直す店長と呼ばれたであろう黒髪長髪の如何にも胡散臭い雰囲気を放つ男がこちらを見ている。


「いらっしゃいお客サン、好きな本を探すといい」


 店長と呼ばれた男はそう一言だけ言うと手で僕の後ろを示す。

 それに合わせて振り向くと、そこには何枚もの本棚が並んでおり、中には本がギッチリと詰まっていた。


 そうか、ここは本屋だったのか。

 いや―――置いてある本を見ると、若干表紙が破れていたり年季が入っていたりするので、ここは古本屋というやつだろうか。


 実際に来たことはなかったが、木造の建築や本棚などの雰囲気は僕が想像していた古本屋とかなり似ており、人の少ない店内はかなり自分好みの雰囲気だ。


 僕は店員と呼ばれた男の

 僕は店員達に一度頭を下げてから内装と本を見ながら店内を歩く。

 ここがどんな場所かはまだ完璧に理解出来ていないが、取り敢えず冷静に頭を冷静にするためだ。


 途中、先程見かけた白髪短髪の男が本棚の整理をしていた。


 僕がその店員に話しかけようとするとそれを察したのだろうか、店員は僕に、どうかなさいましたかと尋ねて来た。


「ちょっと聞きたいんですけど、ここは何処でしょうか? いきなりドアに吸い込まれてもう何が何だか」


 言うと男は少し悩むような素振りを見せた後、少し離れた位置の本棚から一冊の本を取り出してページを捲り出す。


「ちょっと待ってくださいね……………………………ああ、これだ」


「あの、質問――――――」


「ちょっと失礼」


 言い、僕の胸に突然手を当てる。


 十秒程だろうか、普通ならば直ぐに手を離させれば良かっただろう、だが扉に吸い込まれたという未知との遭遇がそれを許さなかった。


 店員は手を離すと今度は少し納得したような素振りをする。


「天狗攫い、間違いないですね」


 店員は自分の手をピシャリと叩きながらそう言った。


 天狗、名前自体は日本人ならば必ず一度は聞いたことがあるだろう。

 赤い顔で鼻の長い妖怪、僕が知っているのは羽が生えているだとか足駄を履いてるとかそんな外見程度だ。

 つまり僕は、天狗隠しと言う言葉には全く心当たりがないのだ。


 ここは無知を晒すようだが解説をお願いしよう。

 そう思ったときだった、僕の方にぽんと手が添えられる。

 振り向くと先程座敷に居た店長が見透かしたような顔で左手に持つ杖をコツコツと鳴らす。


「どうやら何も状況が把握出来ていないようだね、奥の座敷で茶でも啜りながら説明するが聞いてくかい」


 今右も左も分からない今の僕に断る選択肢は最初から無に等しいだろうに。

 この目はそれが分かっていってる目だ。

 生活が悪い人間は、学校で飽きるほど人を見れてれば分かる。

 悪いがこの店長、いい性格してそうだ。

この後もう1話投稿します。

ここまで読んで気に入った方は読んでもらえると幸いです。

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