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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
一章   古本屋篇
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二十六冊目

 訓練を始めてから、意識をしての足での風発生は確かに速度が上がった。


 しかし、これを手で持っている時の速度と同じかも言われれば、その差は大きいだろう。


「余裕のある戦いならこのままでも平気だろうけど、相手が端蔵並みに強いと、今の宗介くんの速度じゃ絶対に間に合わないからね。

「私も偶に妖具を使うけど、この訓練が一番大変だったよ。

「でもこれが出来る様になれば、武器を落とされても足で触れて相手を倒したりなんて出来て応用が効くから、絶対に役に立つよ」


 そんな事を言われた後、猫宮さんに指示されて目を瞑って座り、足に羽団扇を当てた状態で石を投げられる事二日間が経過した。


 石の空気を切る音を聞いて、何とか風で石を弾こうとするが、猫宮さんはそれを察知して投げる速度をちょっとずつ調整してくる。


 しかし、ずっと続けるうちに収穫もあった。


 続けていると、肌の周りに風とは違う何か暖かい物を感じる様になった。


 その暖かい物を足に乗る羽団扇に集めてから放出すると、それが風になる。


 最初は時間が掛かったが、繰り返していく内に、段々とタイムロスを減らすことが出来た。


 そんな事を思っていると、今まで一つだった石が二つに増えた。


 一つの頃の様に大きな風で飛ばすと、石同士がぶつかって自分の方向に飛んでくる事があった。


 しかし、それも小一時間経つ頃には風切り音の鳴る場所にピンポイントで風を出すことで解決した。


 そんな事を続け、五個の石に慣れる頃、今まで一つずつしか増えなかった石の量が急激に増えた。


 音からして十個丁度だろうか、二倍の量だ。


 如何にタイムロスが少なくても、十個同時は難しい


 しかし、音での場所の判断とタイムロスを減らした風の噴出。

 この二つを完全に同期させる事が出来れば成功確率は比べ物にならない程上がる。


 しかし、此処で新たな障害が発生した。

 石との距離が分かりにくい。

 風切り音が多い分、どの石がどの音かの判断が難しいんだ。


 強い風で吹き飛ばしても、やはりこの数の石ならば絶対に幾つか自分に飛ぶ。


 風の連射も難しい為、一度出すタイミングを間違えれば確実に幾つか自分に当たるだろう。


 全ての石を一撃で吹き飛ばさなければならないこの状況下、猫宮さんの指示で自ら封じた視力の代わりに不思議な感覚が現れる。


 石が何かに当たる感覚だ。

 手で触っている様にはっきりと分かる。


 距離がさっき迄とは段違いに分かりやすい。


 即座に自分に近づく石の距離をはっきりと見極め、最も自分に近い物から吹き飛ばす。


 十個全て吹き飛ばした頃には、石の飛んできた方向から拍手が聞こえてきた。


「おめでとう宗介くん、妖力の使い方をマスターしたみたいだね」


 鼻声だ。


 目を開くと、僕以上に嬉しそうな猫宮さんが満面の笑みで涙していた。


 それに驚いて感動は引っ込んだが、後で聞いた、最後に石の量が増えたのは投げるのが楽しかったかららと言う話で、若干腹が立った。

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