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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
一章   古本屋篇
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二十五冊目

 無貌木さんの居ない晩、ほんの僅かな期間だが、あの優しさにもう二度と触れる事が出来ないと思うと胸が締め付けられる。


 しかし、幾ら辛かろうと訓練は怠れない。

 もし、あの時僕が強ければ無貌木さんは死ななかったかもしれない。


 こんな後悔を二度としないため、僕は強くなろう。


 こんな気持ちを察してだろうか、猫宮さんは嫌な顔一つせずに昨日の予定通り訓練に付き合ってくれる様だ。


「すいません、猫宮さんの方が僕よりも無貌木さんと一緒に居た期間長くて、僕なんかよりも断然辛いはずなのに」


「僕なんかよりとか、期間とか、言わないで。

「無貌木くんは、期間なんて関係なく、皆んなに優しい人だったから。

「悲しさに優劣なんてつけちゃダメなんだよ」


 猫宮さんは、今にも泣き出しそうな顔をしていた。


「宗介くん、あの男は脅威たり得る相手に九尾苑さんだけじゃなくて君も選んだ。

「だけど今の君じゃ手も脚もでない。

「つまり、あの男が脅威に感じているのは貴方の成長性なの。

「だから、私も出来る限り協力するから、無貌木くんの仇を撃たせてね、お願いだから」


「はい、無貌木さんの仇は何としても僕が必ず」


 根拠なんて無い、でも、今僕の頭に思い浮かんだ言葉はこれだけだった。


「さあ、じゃあ約束して貰っちゃったし早速頑張っちゃおうか」


 少し吹っ切れた様子で猫宮さんは言う。

 今回の訓練の内容は、猫宮さん的には、超瞑想らしい。


 よく分からなかった。


 地下に着くと、猫宮さんは僕に足を組んで座る様に言う。


「まずは羽団扇を持った状態で風を出して自分の体の周りに薄く弱く纏わせてみて」


 言われ通りにする。


「出来ました、これくらいなら九尾苑さんに蹴られながら身を守るために覚えましたよ」


「じゃあ次ね、羽団扇を手から離して、そうだなあ、じゃあ足で触れながら風を出してみて」


 言われた通り、足で触れる。


 手で触れている時よりも風を出しにくい

 今まで、いつも手で触れて使っていたので知らなかった。


「多分ね、宗介くんはその羽団扇の形、刀は手で使う物って言う凝り固まった考え方、固定概念があるんだよ。

「私との訓練は手で触れてる時と、それ以外の部分で触れている時の風を出す速度を限りなく同じにするから、しばらく難しいかもしれないけど頑張ろうね」

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