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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
一章   古本屋篇
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二十一冊目

 破片から伸びる無数の石の杭で、四肢の動きを完全に封じられた。


「猫宮、外してやれ」


 そう言われた猫宮さんは、僕の動きを完全に止めて、どんなに力を入れても抜ける気配のない杭を全て軽々抜いていった。


「コツがあるんだよ、宗介くん」


 そうドヤ顔で言った猫宮さんは、杭を荒木寺さんに渡してから、何かを聞いている様子だ。


「よし、いいだろう。

「九尾苑には俺から話を通しておく、好きにしろ」


 言われると、猫宮さんは跳ねて喜ぶ。


 僕が見ていた事に気づくと、猫宮さんは花が咲く様に笑い、胸を張って言う。


「宗介くん、明日から訓練の相手は私だよ。

「夜行性の猫の訓練は中々終わらないから覚悟しててね」


 嬉しそうにそう言う猫宮さんの印象は、スーツ姿の大人な女性から幼女に成りつつある。


「私達は明日の準備があるから宗介くんは先に荷物持って帰っててよ」


「分かりました、それじゃあまた明日もよろしくお願いします」


 言うと、猫宮さんは満足気に頷き荒木寺さんの元に戻っていった。


 翌日、無貌木さんは足が千切れた状態でどうやって帰ったのかと気になっていたが、出勤時には完全に足はくっ付いてており、千切れてなんていなかったかの様な様子で歩いていた。


「無貌木さん、その足」


「ああ、そう言えば切れても大丈夫な理由を教えてなかったね」


 言うと無貌木さんは、靴を脱いで僕に足を見せる。

 足首よりも先がない、ただの棒の様な足を。


「僕はね、元々足なんて無いんだ。

「だって、布なんだから」


 自分の足の皺を伸ばしながら無貌木さんは言う。


「僕はね、一反木綿という妖の末裔なんだ。

「聞いたことないかい、ひらひらと飛ぶ布の妖を」


 言うと、無貌木さんは靴を履き直す。


 一反木綿は名前と布だと言う情報だけは持っていたが、まさか無貌木さんがそうだったとは。


 少し驚いたが、衝撃的事実はここ一ヶ月体験し過ぎた。


「さて、無駄話はここまでだよ。

「業務再開だ」


 ぽんぽんと軽く手を叩いてから言うと、無貌木さんは本棚の元に行き掃除を始めた。

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