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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
一章   古本屋篇
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十七冊目

 移動中、二人はずっと喋っていた。


 先行する僕は最初は後ろから刺されるのではと思っていたが、途中からは話の内容がくだらなすぎて警戒が解けそうになった。


 昨日食べたラーメンが、明日は蕎麦が食べたい、昔行った屋台が。

 そんな食べ物の話ばかりだった。


「さあ、着きましたよ」


 移動中も現在も、いつでも羽団扇を抜ける状態でいた。

 しかし僕は今、羽団扇から手を離し放心状態になってしまった。


「宗介くんお疲れ様、どうしたんだい、そんな口を開かせて馬鹿みたいに」


 九尾苑さんが何故ここにいる。

 僕が慌てて後ろの二人を見ると、二人は揃って笑いを堪えながらのコソコソ話中だった。


「なあ猫宮、あいつ最後まで演技に気づかなかったな」


「そうね、ずっと警戒してたから家に連れてきたばかりの猫みたいだったわ」


 耳打ちの様に口を手で隠し、小さな声で話しているが、僕は身体能力と同時に五感も上昇している為、丸聞こえだった。


「こらこら、確かに僕達からしたら滑稽だったけども、それでも彼は僕達が望んだ通りの結果と成長を見せてくれたんだ。

「笑っちゃ失礼じゃないか」


 九尾苑さん、滑稽とか言ってる貴方が一番僕に失礼なんですよ。

 口角がさっきからぴくぴくしてますし。


「望んだ通りってどうゆう事ですか。

「説明して貰えますね」


 勿論だとも。

 そう言った九尾苑さんは、某座っていた人間がゲル状に溶けてしまうソファーを放り投げる


「さて、説明しようか、説明してしんぜようか」


 九尾苑さんは、何故か後半を疑問系で言う。


「まあ、説明って程じゃないんだけどね。

「君はこの一ヶ月で強くなった。

「異常な速度でね。

「それは環境と指導者と君の才能、あとは指導者のおかげだろう。

「で、強さには精神力が伴わなければならない。

「今回はそのテストさ。

「例えば君が無貌木くんを最初に見つけたときだ。

「あのとき君が、冷静さを失い二人に飛び掛かった場合は即失格だったよ。

「失格の場合は、まあ数年は君の精神力をアホ程鍛えて鏡の回収どころじゃなかっただろうね。

「君が命惜しさに逃げ出したり二人を地下に案内しなかった場合は、前者と同じように数年は精神力をアホ程鍛えるコースだった。

「それもなくて良かったよ。

「まあ、結果君は精神力のテストは合格だよ。

「君は強くなったんだ、身も心も。

「一ヶ月間、毎日毎日、雨の日も風の日も、天気なんて関係ない場所で僕に蹴られ続けてね。

「君は他人の為に命を賭けられる。

「この店の信用たり得る人間だよ」


 話の初めは騙されていた事に腹が立っていたが、何故だろう、今はとても幸せだ。


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