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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
終章   決戦篇
163/164

終幕

最後の戦い

 終幕    未投稿

「沙耶ちゃん!」


「もう遅い」


 柏崎の掌か沙耶の顔へと近づく。

 沙耶は動かない。


「――――――乖離一式切法、一節。閃!」


 己龍家初代当主の作り出した技。

 古称は、己龍式切法―――乖離。

 この美しい太刀筋、糸を伸ばしたかの様な一閃を向けられた者は誰一人として、生存を許されていない。


 この一閃を元として数多くの技が生まれ、後に名を乖離切法と、一節、閃と名を改められた。

 多くの者が一式を使うが、稀に二刀流の二式を使う者も存在する。


 そんな歴史を持つ一撃が今、柏崎景の腕と体を乖離。

 切断したのだ。


 技の操り手は、これまた短くとも歴史ある古本屋の指揮権を、荒木寺に任せっきりとはいえ担う者。

 そして、指揮権を握る者はこの店では、店長と呼ばれる。

 店の八代目店長、一ノ瀬宗介だ。


「あそこから持ち直したのか!」


「火走り五連!」


 宗介は一先ず柏崎を沙耶から引き離すことを選択。

 火走りを二人の間に放つ。


「沙耶、怪我は?」


「だ、大丈夫!」


「よし、じゃあ下がってて」


「…………でも!」


「大丈夫、俺が二人倒す」


 沙耶を下がらせると、宗介は探る。


「待たせたな」


「ああ、待ったよ」


「先ずは、敵を減らすか」


 羽団扇を抜いて、逆手に握る。


「本物は…………そこだな」


 宗介は刃を地面に刺して、鋒から風を放つ。

 すると、地面はひび割れ、その隙間から風が吹き出す。

 その風で吹き飛んだ小さな瓦礫の中に、人影が。


「お前が、本物だ」


 刃を真っ直ぐ、脳天へと突き穿つ。


「本物のミアを見つけた、どうやって…………」


「この分裂は、根を分けて作ってんだろ。それなら、一人根が少ないのか本物だ」


「それでも大差はないはずだ」


「少しでも差があれば、分からないことはない」


「三日会わねば何とやらか」


 刃を頭から引き抜いて血を払い、鞘へと仕舞う。


「すぐに終わらせる、生き長らえる覚悟をするんだな」


「君を殺してでも死んでやるさ」


「言ってろ。怪現―――炎帝!」


「さあ、また死会おう!」


「いや、終わりだよ」


 宗介は静かに瞼を落とし、そして指を、柏崎へと向ける。


「二の手―――――――――火葬」


 瞬間、柏崎の体は燃え上がる。

 瞼越しにでも瞳を焼く様な炎。

 それは柏崎の皮膚を焼き、肉を焼き、そして、骨を焼いた。


「僕の根と一緒に見えない塵になって、一生燃えてろ」


 怪現を、放つ、捨てる。

 根で術を発動した状態で、怪現の効果を残したまま、相手にのしつける。


「終わりましたよ、九尾苑さん。僕の勝ちです」


 こうして戦いは、幕を下ろした。

次回、最終回

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