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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
終章   決戦篇
160/164

世界へ侵入せし者達

 三毛塚家、嘗て妖具作りで栄えた家系だ。


 神尾沙智の出す木を使えば、未だ世界に存在しない程強力な妖具を作れるのではないかと、同時八歳の沙智を攫おうとするが、当然沙智本人に返り討ちにされ失敗。

 偶然その場に居合わせた沙智の祖母、屋比久童磨の妻を殺害して沙智の隙を作り、逃走。

 しかし、その晩の内に屋比久に壊滅させられた家だ。


 その戦いは術師の中ではあまりにも有名だ。

 そして、その戦いで使用された屋比久の怪現の名も、内容も。


 霊妙不可侵狭間峠、触れたものの生命を吸う術だ。

 触れた生物の命を奪う柏崎景とは違い、地面に触れて大地の生命を奪ったり、相手を瀕死ギリギリまで疲弊させるなどの使い方が出来る。


「だが…………それは宗介の怪現同様触れなきゃ意味がねえ……じゃなかったのかよ…………」


 力を吸われ、床に膝を付いた荒木寺は息絶え絶えに言う。


「儂の怪現と宗介、あの者の怪現では年期も練度も違いすぎる。知っておるか? 極限まで鍛え上げられた、才のある者の怪現は、世界への侵入を果たす」


「薄氷…………千枚通し!」


「無駄だというのが分からぬか!」


 屋比久を中心として半径五メートル以内に入れば、荒木寺の放った術の氷だろうと、全て生命力へと換算されて吸い取られる。


「妖力とは即ち生命力と同義。それを幾ら放とうと、届かぬが道理よ」


「なら黙って生命力吸い切って見せろッ!」


「それは出来ぬ話。契約での、儂が捉えた奴らを柏崎の術で配下とする」


 怒鳴ると同時に投げた手裏剣も妖力の様に分解され吸収される。


「毒を塗りたくった様だが、それも所詮は世の物」


「チートが…………」


「ちーと―――若者の言葉の意味は分からぬが、苦情ということは分かる。世を支配するこの術を目の当たりにした者達は決まってその様な言葉を吐きおるからの」


「…………かたねえか、台無しだ」


「よう聞こえぬ。聞き直してやる、もう一度言って聞かせなさい」


 屋比久が声をかけると、荒木寺は生命力を吸われて若干の弱りを見せる表情から一変。

 地面から石の槍を生やしてから、不敵な笑みを浮かべていう。


「あんたの負けだって言ったんだよ、爺さん! 怪現―――」


「貴様のそれとも格が違うと分からぬか!」


「皎の境界――――――じゃあな」


「………………!」


 屋比久が気がついた頃には、既に心臓部分にクナイが刺さっていた。


「俺の術式は氷を発生させるんじゃなく、凍らせる事だ。例えば千枚通しは、氷を生やすんじゃなく空気を凍らせてる。そして皎の境界は、時間事態を凍らせた」


 生命力を吸われすぎて、怪現発動とその直後一度の攻撃で体力が尽きた荒木寺は、見える景色が薄れゆく瞳を屋比久へと向ける。


「悪いが俺の怪現( それ)も、世界へと侵入してるんでな―――って、もう聞こえてねえか」

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