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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
一章   古本屋篇
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十五冊目

「おめでとう、今度は意識も残ってるらしいし、なんと無傷だ。

「やっぱり君天才ってやつなのかな」


 称賛の言葉を並べ終わると、九尾苑さんは荷物をまとめ始める。


「さて、そろそろ業務開始時間だ、急いで帰るよ。

「あ、君はお風呂入ってね」


 九尾苑さんは地下に連れてくるのが突然ならば地下から帰るのも突然だ。

 僕は慌てて九尾苑さんの背を追う。

 帰りは行き程疲れはしなかった。


 地上に戻り、急いで風呂に浸かる。


 脱衣所には、早朝に貰った書生服とはまた別の書生服が置いてあった。

 何種類持っているのだろうか。


 服を着て九尾苑さんに服の礼を言い、無貌木さんに挨拶を済ませると古本屋の業務を開始する。


 業務内容は地下からの帰りに大量の握り飯を食べながら聞いて場合している。


 まずは本棚の整理整頓だ。


 本の埃を一冊ずつ落としてゆき、文庫順、五十音順それぞれの並びを直してゆく。


 それらが終わると今度は本から落とした埃などの掃き掃除。

 掃除は好きな方なので苦はなく、寧ろ店内が綺麗になっていく光景は心地良いまである。


 掃除の途中、窓から外を覗き気づいたが、ここは都内のアパートの一室らしい。

 風景からして二階だろう。

 しかし窓から見える限りのアパートの雰囲気とこの店の間取りはどう考えても合わない。


 僕がここに飛ばされた時の様にこのアパートの扉も別の場所にあるこの店に繋がっていたりするのだろうか。


 何故都内か分かったか、それは簡単だ、某日本で一番高い建造物がよく見える。


 業務を初めてしばらく経つと、無貌木さんがサンドイッチを持ってきてくれた。


 店内には、時計がないので時間が分かりにくいが、気づいたら昼だったらしい。


「すいません、気が利かなくて」


 僕はサンドイッチを受け取りながら言う。

 僕は突然やってきた最年少の新人にも関わらず昨晩や今朝も今も、食事を用意していただいてしまった。


 しかし無貌木さんはそんな僕に対して優しい言葉を返してくれた。


「いやいや、気が利かないだなんて、店長は働かないし僕は週に二日しか出勤出来ない。

「そんな店だから、君が住み込みで働いてくれるって聞いたとき、心底安心したんですよ。

「そんな訳で、僕がいる日はお礼に食事の用意ぐらいさせてください」


 久しぶりに分かりやすい優しさに触れた気がした。

 僕は無貌木さんがいなくなった後に一口一口、感謝の念を込めて頂いた。

書いてる途中に脱衣場って名前が出なくなって困ってました。

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