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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
四章   秘術篇
157/164

未来への想いを

終章、開幕!

「昨晩、寝れたかい?」


「ちょっと寝不足です」


 昨日柏崎の過去を見た後―――妖具、ワールドログをもう一度だけ使わせてもらった。

 己龍から土産にと貰った桐箱の中身、髪の毛を入れて。

 それが気になったのか、ポールさんからの質問だった。


「あの後、何を見たんだい?」


「柏崎の過去に比べればほんの少しの、感動も何もない話ですよ」


 戦いの才能があったものの、名門から妖力も感じ取れない男の家へと嫁ぎ、子に妖力を託した母の話。


「成程ね、何か得られたかい?」


「そりゃもう、最愛の母からのプレゼントを自覚しました」


「それじゃあ勝てるね?」


「ええ――――――誰でも、神様だって焼いてみせます」




 ****




「これ終わったらさ、みんなでパーティーしようよ」


「猫宮さん! いいですね、楽しそう」


「己龍の人とかも呼んで、ワイワイしよっか」


「己龍…………ちょっと気が進みませんけど、まあ世話になりましたからね」


「パーティー何がしたい? 焼肉とか、タコパとか、色々あるけど」


「僕は、焼肉とかしたいです。前に歓迎会でやった」


「よし、じゃあ決定ね! 楽しみにしてて!」


「ええ、絶対やりましょう」




 ****




「おい宗介―――当然、抜かりねえな?」


「勿論ですよ」


「他の奴らと話してまわってるみてえだが、俺からは叱咤激励も励ましもねえぞ」


「知ってますよ。なんか緊張しちゃって、お話ししてるだけです」


「そうか―――まあ戦いだからな、誰が死んでもおかしくねえ。今のうちに話しておいた方がいい」


「荒木寺さんは、この店の誰かが死ぬとでも?」


「思わねえな」


「同じですよ」


 今回は、絶対に誰も殺させない。

 この力、守る為に使いたい。


「今後誰も死なないし、誰も欠けない。だから、日常が続くから、僕はいつも通りの会話をします」


 いつもの日常―――決して変わることの無い日常だ。


 訂正はしない。

 僕は、素晴らしい今を生きてる。


 いつかは大人になるであろう僕だが、この古本屋で働いて、この関係を続けてもいいと思える。


 そうしたらこんな時間も続くし―――戦いが終われば悪戯に時間を消費する散歩の時間なども出来るだろう。


「だから、負けませんよ」


「当然だ」




 ****




「ねえ沙耶、一ついいかな?」


「ん? 何?」


「僕さ、沙耶との記憶を取り戻して、ちゃんと今の僕が沙耶を好きになったよ。あと、記憶が戻る前からも、少し好きになり始めてた」


「うん、ありがとう」


「それで、一度も嫌いにならないで、二回好きになったからこそ、頼みたいことがあるんだ」


「いいよ、なんでも聞いてあげる」


「それじゃあさ、僕って次の五月八日に十八歳になるんだ」


「だいぶ先だね」


「沙耶は来月の九日だよね?」


「そうね、プレゼントくれるの?」


「まあ、誕生日なら当然」


「ありがと」


「うん、でも今言いたいのはちょっと違くてさ」


「へえ、聞かせてくれる?」


「ああ―――お互い十八になったら、二人暮らしとかはまだ難しいかもしれないけど、でも形だけも、結婚しよう」


「ええ、そうしましょ」


 暫くの沈黙など無く、即答だった。

 そこに、邪魔の入る余地など微塵も存在しない。

 風さえも、空気さえも、神さえも、入り込む余地など存在しない。


「絶対、結婚しましょうね」


「ああ、約束だ」


 願いを未来に込めた戦いだ。

 絶対に負けるわけにはいかない。


 決死なんかじゃない。

 命なんて捨てずに帰ってくる覚悟をした。

 絶対に死ねない戦いが、始まる。

読んでくださりありがとうございます!

もし面白いと思い、尚且つまだの方はレビューや感想、ブクマなどもらえると嬉しいです!

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