メリー・アルメルの花園
あれもダメ、これもダメ、成功の未来が微塵も見えやしない。
「あ〜嫌になってきた」
愚痴だって吐きたくなる。
荒木寺さんと試行錯誤を初めて六日、一向に術が発動する気配すらないのだ。
今でこそ一人でやっているが、あれからも荒木寺さんは今期強く一緒に付き合ってくれている。
「ねえ、荒木寺さんが話あるって!」
「はいよ〜すぐ行く!」
地下へ降りてきた沙耶に返事をして、一度訓練を切り上げる。
この訓練をして良かったことといえば、炎の火力が底上げされたことぐらい。
それでも怪現には及ばない程度だ。
そんなことを考えながら、階段を駆け上がる。
沙耶に途中で追いついたので、少しペースを落として一緒に戻る。
「お待たせしました」
「いや、突然悪いな」
荒木寺さんが待っていたのは、大事な話をする際に使うもう一つの地下室だった。
端蔵と戦う前にも使用した部屋だ。
「今回はちと大事な話でな、柏崎を倒す手札が揃った!」
「――――――!」
僕と沙耶、既に部屋に居た猫宮さんも目を見開いて驚く。
先にいたのに猫宮さん、説明をされていなかったのだろうか。
「ポールが所有している妖具を今朝漁ってきてな、今の状況にぴったりの物が見つかった」
すると、荒木寺さんの隣に座るポールさんがすぐ側に置いてあるアタッシュケースから一冊の本を取り出す。
「これは僕が十年前にフランスで買ったものでね―――名を、メリー・アルメルの花園。これに柏崎景を閉じ込めるんだ!」
封印の書的なものか。
確かに、殺せはせずとも封印は可能か。
「この本は俺が使うとして、お前らには気を散らす役割を頼む」
確かに適任は多様な術と豊富な知識と経験を持ち合わせる荒木寺さん。
当然納得だ。
「そんで次だ」
「ん? まだ何かあったっけ?」
荒木寺さんに、猫宮さんが言う。
この口ぶりからして、猫宮さんは事前に荒木寺さんから話を聞いていたか。
そして、地で話の内容を忘れていただけか。
「ああ、これは宗介の話だからお前には言ってなかったな」
「え、僕ですか?」
「ああ、お前の怪現の話だ。今のまま時間を消費し続けるのは得策じゃねえ―――だから嫌なやつに頭下げて頼み込んできた。お前、ちと外で揉まれてこい」
荒木寺さんは心底嫌そうな顔で言った。
嫌なやつって、どんな…………………………。
「場所は知ってんだろ? お前、己龍家行ってこいよ」
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