見落とし
「よし、やってみろ」
「はい、いきます!」
端蔵襲来から三日が過ぎ少し落ち着いた頃、僕は荒木寺さんに二つ目の怪現習得に付き合ってもらっている。
しかし、まるでダメだ。
なんどやっても成功の兆しすらない。
「どんな術か、明確なイメージを持ってやれ」
「はい!」
僕達の声だけが地下の広い空間に響き渡る。
イメージ、炎帝とは違う激しく燃え上がるような、そんなイメージだ。
その業火で焼くというよりは、寄せ付けないような、そんな炎を……………………。
「やっぱり、ダメです」
「悪いな、こればっかりは前代未聞だ。もし可能な技術だったとしても、俺には的確なアドバイスなんて出来ねえ」
「いや、充分助かってますよ! 僕一人じゃ暫くやってる内にイメージが雑になるだろうし、妖力操作なんか荒木寺さんに教えてもらわなければ気にもしませんでしたし」
妖力操作が僕には足りないのかもしれない。
より上手く妖力操作を行えれば、もしかしたら二つ目の怪現に近づけるかもしれない。
何か一つでも見落としがないか、頭を捻り続ける。
何か一つでも見落としがないか、願い続ける。
僕が絶望するならば、それは見落としがあった瞬間に自分の不甲斐なさに対してではなく、見落としが完成にないと分かった瞬間のどうしようもなさだ。
だから願う。
どうか見落としよあれと。
そしてどうか、僕にそれを見つけて、達成させてくれと心から。
「さて、もう一回!」
****
チクタクと、秒針が動く音が鳴る。
「無理なようですね、次の手はお考えで?」
「そうだなあ、もう少し僕は見てたいよ」
ハチ公前。
腕時計を眺めながら柏崎景はミアに言った。
メイド服を着ているミアは中々に視線を集めるが、二人はまるで気にしていない。
まるで周りがおかしくて、自分達が常識、一般かのように振る舞っている。
実際は世間の評価など興味のないだけだが、しかし強気だ。
「さあて、どう動くのかねえ」
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