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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
四章   秘術篇
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全盛期

「沙耶、お見舞いに……………あれ、元気そうだね」


 僕が沙耶を寝かせた部屋へ入ると沙耶は普通に、いや―――普通以上に元気だった。


「ねえ、何で三点倒立?」


「えっと………………出来そうだったからつい」


 そうか、出来そうだったなら仕方がない、とは言わない。

 危ない―――納得しかけたが、数時間気絶しててやっと目覚めたばかりの人間は本来三点倒立なんてしないで安静にするべきなんだ。


「ねえ、驚いたついでにちょっと運動しない?」


「運動って、並んで三点倒立でも?」


 ひどい絵面だ、想像してしまったのが悔しい。


「久しぶりにちゃんと、体が追いつく運動したいの」




 ****




「やっぱ良くないって、明日にしない?」


「いや―――絶対今のが楽しいし驚くから、始めよ!」


 沙耶が言い出した運動とは、何でもありの手合わせ。

 僕と荒木寺さんがポールさん到来前にやっていたものだった。


「少しでも無理そうだと思ったら中断するから、沙耶も無理そうだったら言ってよ」


「はいはい、始めましょ」


 心配だし、一応素手でやろう。

 なんだか大量の記憶を戻してから素手のが調子がいいので、何かしらハプニングが起きた際こっちのが対応しやすい。


「じゃあ、スタート!」


 沙耶がそう言ったと同時、僕は一歩踏み出す。

 軽い足取りで、正直油断していた。

 恐らく絶好調のコンディションでない沙耶に負けるはずがないと。

 だからこそこ―――それを考慮した上での急上昇した戦闘力に僕は気づけなかったのだ。


「まずは右!」


 沙耶が指を右へと向けると突然、全身が途轍もない力によって押される、引っ張られる、吸い寄せられる、一瞬にして、僕は動かされたのだ。


 慌てて足でブレーキをかけるが勢いは止まらず、柱へと激突。


「次はどうしよう…………上!」


 瞬間、今度は沙耶の言った通りに上空へと動き出す体。

 なんだこれは、知らないぞ!


 柱に手を突っ込んで削り取り、手の内でただの石となった元柱を、沙耶へ向けて投げつける。

 すると体が上空が向かうことはなくなったが、今度は投げた石らが僕へ向かい反射されたかのように飛び戻る。


「火吹きの左腕三の指、獄壁!」


 一旦全て防いで、次の手を――――――。


「はいドーン」


「そんな動けたっけ…………っ!」


 獄壁が視界を塞ぎ、その隙に沙耶は僕の背後へと移動、今までからは想像もつかないほどの威力の蹴りを繰り出した。


「これが私の全盛期―――全力で本当で、元通りなの。知ってるでしょ?」


 蹴り飛ばされて壁に激突、そしてその結果砕けた壁の瓦礫に埋まる僕に向かい、沙耶は言った。


 瓦礫を退けながら僕は納得した。

 夢の中、あの記憶の中で確かに沙耶は僕の思う以上に強かった。

 他の情報が強すぎて忘れていたが、おかしな点がいくつもあるじゃないか。

 まず沙耶の術は吸い寄せるものではなかった、真は空間の方向を入れ替えるルービックキューブ的な術だ。


 何故? 今まで隠していたが記憶の中で明らかになったので改めて明かした?

 それならば僕の記憶が戻ってすぐのはずだ。

 ならば何が、まあ一つしかない。

 端蔵が、何か関係している。

 沙耶がこの情報を僕に明かした理由を、このタイミングだった理由が、端蔵にある。


「一の指、火遊び!」


 一つ撃ち出すが、当然のように方向を変えて戻ってくる。

 長距離攻撃に対して無敵か?


 なら近距離でも試すか。


 双炎で刀を二本、ひとまず一本は投擲だ。


「学ばないねえ、あたしゃ悲しいよっと!」


 当然、方向が変わる。

 だけどこれで終わりじゃない。

 ボカンだ。


 投擲した刀を爆発させて、広範囲攻撃なら…………ダメか。

 爆発も一定の範囲からは空間を削られたような形で別方向へ向かっている。

 爆風も然りだ。


 全開の沙耶、厄介だな。



読んでくださりありがとうございます!

もし面白いと思い、尚且つまだの方はレビューや感想、ブクマなどもらえると嬉しいです!

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