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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
四章   秘術篇
139/164

理解不可

「うん、ありがとね!」


 シェリーは嬉しそうに言う。

 浮かせた端蔵の死体を見て、嬉しそうに。

 何度話しても慣れない、どうしようもなく歪んだ少女、きっと彼女は碌な人生を歩めないだろう。

 普通の心を持ち合わせない、共感出来ない、分かり合えない。

 話しているだけで、考えを聞いているだけで吐き気がする。

 こんな可愛らしい見た目をした少女の口から吐かれる、どす黒い言葉は、容姿と似合わなすぎる。

 そんな彼女だからこそ、今回端蔵の死体が見つかった、やってきたことは良かったと思う。

 何故って―――これを渡してしまえばきっと、僕は今後シェリーと話す必要がないのだから、解放されるのだから。


 だからこそ、開放感と畏怖感と嫌悪感とそして、この少女が今後歩むであろう道をほんの僅かに気遣って僕は言う。


「シェリー、元気でな」


「うん、バイバイ!」




 ****




「渡したか」


「ええ、死体の処理とシェリーとの別れを同時に出来てスッキリです」


「お前…………共感はするが人目のあるところで言うなよ? あの感覚は実際に喋ったやつにしか分からねえからな」


 店に戻ると、荒木寺さんと少しの会話、実はこんなくだらない時間が結構好きだったりする。


「沙耶の調子はどうですか?」


「安定しちゃいるが、まだ寝てる」


「了解です―――それじゃあ先に、面倒ごとを片付けますか」


 面倒ごと、大事なことじゃなければ目を瞑って流すのだが、今はそうも言ってられない。


「沙耶には悪いな」


 しみじみと思う。

 しかし、命がかかってる限りそんな考えも一旦横に置いて、斬る。

 当然沙耶をじゃない、僕が斬ったのは、炊飯器だ。


「ありました、切れ端ですね」


「たく、面倒なことをしやがるもんだ」


 僕が地上の危機を予想出来た理由、ミアさんの持ってきた炊飯器だ。

 それを斬った断面から出てきたのは札の切れ端、恐らく発動してからしばらく付近の様子を見れたり音を聞いたりするものだ。


 これでポールさんが店に近づくのを察知して、僕達を陥れるために自分の分裂体を森に放った。


 沙耶は新しい炊飯器に喜んでいたので悪いが、斬って正解だったな。


「荒木寺さん、これって電話みたいに逆探知って…………」


「無理だな、正確にはもう無理と言うべきだ。少し前に妖力が消えてやがるからな、辿る線がねえ」


「それじゃあ、陽動や僕達を誘き寄せるための罠じゃない。本当に何が目的で………………」


「あんま考え過ぎんな―――世の中考えのわからねえ奴らは溢れるほどいるんだ。例えば、さっきのシェリーとかな」


 そりゃそうだ、気分を切り替えよう。

 例えばどうしようか、沙耶の様子でも見に行こうか。

 見据えるは先、気付くのに遅れた後悔を振り返るべきじゃあない。


 そうだろ、そんな前向きの人間だろ、僕は。


読んでくださりありがとうございます!

もし面白いと思い、尚且つまだの方はレビューや感想、ブクマなどもらえると嬉しいです!

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