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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
四章   秘術篇
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訪れ

「なんだか、こっちのがいいや」


「やっと出したか、やっと様子見は終わりか?」


「まあ、そんな感じですっ!」


 火走り五連、至近距離でのこれには流石の荒木寺さんも回避。


「火火、炎の間に烈刻み、剣の鋒炎が溶かす。千の鋒向かうは大地、蛮勇の騎士は骨身で焼かす。攻術詠唱術式、炎の剣庭」


 詠唱の最中も当然攻撃はあるが、そこは回避しながらの詠唱。

 前は出来なかったが、密かに練習していたのと戻った記憶によって実用可能な段階まで至った。


 地面に突き刺さる炎の刀を一本抜いて、駆ける。

 途中でもう一本抜いて双剣として、地を蹴り跳ぶ。


 その際更に足に引っ掛けてもう一本抜いて、引っ掛けたまま荒木寺さんへと飛ばす。


 石礫を投げて弾かれるが、どうせ荒木寺さんに一手打たせた隙を作るつもりの攻撃だ。


「縛術、破苦」


「炎獄!」


 石礫を閉じ込めて、完封。


「落炎」


 こちらもすかさず反撃に移るが、微塵も油断などなかったようで、石の壁をドーム状に出して防御される。

 そのドーム状のまま、一部を槍のように変形させて五本同時射出。

 回避はしない。

 むしろ逆で、向かうのだ。

 左手に掴む炎の刀を投げ捨ててから、ほんの僅か、一センチでも自分に一番近い槍を掴んで、それで他の槍を叩き落とす。

 そのまま槍を頭より後ろに構えて、投げ返す。


「僕はいらないんで、どうぞっ!」


 槍はドームに穴を開け、中が覗ける状態に。

 近づいて崩してしまいたいが、荒木寺さんが穴を開けられた際の対策をしていないとは思えない。

 一歩引いて、親指を一閃。


「一の指―――火遊び」


 炎の玉はまっすぐ飛ぶ。

 そのままドームの穴へと進み、侵入。

 ゴルフならホールインワンだ。


「一折目、爆!」


 ドームの破壊、攻撃、同時に行える最善手だ。

 爆発の威力、少し上がったかも。


「反応が遅えぞ」


「……………………ッ!」


 背中に蹴り。

 軽いものじゃない、体重きっちり乗った、重いやつ。


「自分の術の爆破威力ぐらい、見間違えるんじゃねえよ」


 そうか、相殺!

 僕の爆発の威力を、自分の出した爆発で打ち消したんだ。

 だから少し威力が大きく見えて、やっぱ上手いな。


「四の指、獄矢! そんで一折目、裂!」


 矢五本、それに次いで、右手に握る炎の刀も投擲。


「二折目、くちば…………………………?」


 嘴―――そう言おうとした寸前に、随分と慌てた様子の足音が聞こえてきた。


「沙耶、誰が来た〜?」


「見てくる!」


 そう言って沙耶が走って行って、ほんの少しの間。

 不思議に思った荒木寺さんが五本の矢と投擲した刀など易々と叩き落として僕の元へと歩み寄る。


「客か?」


「さあ、今沙耶が見に行ってくれてますよ…………」


 戦闘など終了して二人で音のした階段の方へと歩みを進めようとした瞬間だった。


「一ノ瀬、来て!」


 沙耶の叫び声。

 それ一つで、この空間にやって来た者に何かしら異常があったことを悟る。

 そうとなれば、ゆっくりと歩いている暇はない。

 最高速度に達するまでの時間、一秒未満。

 地を蹴り、空を斬り、ほんの百メートル未満を駆ける。

 辿り着いてみれば、僕が危惧した沙耶に対する危険なんてなかった。

 しかし、これは…………………………。


「ちょっと不味いかも」


「ああ、先生を呼ばなきゃ対処できなそうだ」


 この空間に現れたのは、僕達に何かしらの危険を伝えるような傷を全身に負った、ポールさんだった。

全然直ぐ出て来た

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