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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
四章   秘術篇
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落ち着ける場所

 月は沈み、太陽は登る。

 僕は夜間に新しい怪現の足掛かりを掴めなかった。

 一先ず店内に戻り、皆に帰ったことを知らせる。

 それから朝食をとり、昨晩部屋に置いただけの荷物を片付ける。

 のんびりと片していると時間は驚くほど早く過ぎて、昼。


「なんか、こうやってゆっくりお昼ご飯食べてると帰ってきたって感じする」


「あっちでは食べれなかったの?」


 荒木寺さんや猫宮さんと先に食事を終え、僕が食べているのをただ見ていた沙耶が頬杖をしたまま応える。


「うん、あっちだと僕は早めに一人で食べちゃって、ポールさんが食べてるときは周りに警戒してたから」


「ちゃんと噛んで食べた?」


「うん―――でもこうやってちゃんと味わって食べるのは久しぶり」


「そっか―――その野菜炒め、私が作ったの」


「美味しいよ。味噌汁は?」


「そっちは猫宮さん。お米は私だけど、無洗米だから別に何もしてないわ」


「無洗米楽だよね、最近のは美味しいし」


「そうなのよ、私の家で出る良いお米と同じぐらい美味しくてビックリしちゃった」


 ダラダラと会話しながらの食事。

 襲撃への警戒は必要ないし、気が楽だ。


「そういえば、なんかこの部屋変わった?」


「こないだミアさんが来てね、新しい炊飯器をくれたのよ」


「ああ、どうりで」


 お米が美味しく感じるのは、それも理由にあるのかも知れない。


「ごちそうさま」


 皿をシンクに戻して、軽く水で流す。

 ちゃんと洗うのは夕飯の後でいい。


「一ノ瀬この後は?」


「さっき荒木寺さんに手合わせお願いしたから地下に」


「私も見に行っていい?」


「いいけど、危ないし多分面白くないよ」


「大丈夫よ、勝手に楽しみを見出すから」


 とのことで、とりあえず皿の片付けを終えたら荷物を纏めて地下へ向かう。


 昔は長く感じた階段も、今全速力で移動すれば十分もかからない。

 全速力で階段を降りた結果十分というのは本当に段数やら距離が気になるところだが、それはいずれ検証するとして、階段を降り終える。


 腰にしがみついて来た沙耶に到着したことを伝えて、少し離れた場所に移動してもらう。


「早かったな、飯食ったか」


「ええ、ゆっくり食べましたよ」


 荒木寺さんは指輪の妖具やらを装着して、準備万全。


「準備運動は必要か?」


「今走って来ましたし、必要なら戦いながら解しますよ」


「そんじゃあ早速やるか」


 荒木寺さんは立ち上がると、人差し指の指輪をこちらへ向ける。


「スタートだ」


 開始の合図と言わんばかりの、爆発。

 怪我にはならない、目の前で突然火花が散った程度のものだが目眩し用だろう。

 荒木寺さんは真正面、ならこっちから。


氷菓月獣( ひょうかげっちゅう)


 荒木寺さんは言う。

 突然背後に現れた妖力、前後挟み撃ち、左右罠の可能性。


「石系じゃないのかよっ!」


 愚痴のようなものを吐きながら、振り向きざまに羽団扇を一閃。

 うわ、迫力の化け物じゃん。


「今のが寝起きに目の前いたらショック死しそう」


「これ見た感想がそれかよ」


 背後にいたのは、氷で出来た虎のような生物。

 上下で一刀両断した瞬間動かなくなったが、初見の術だ。


「薄氷、千枚通し」


 次の瞬間、地面から飛び出した先の鋭利な氷。

 これも羽団扇で斬り下して、そのまま止まらずに刃を地面にわせるよう振るう。


 火走り―――地面から生えた石壁で防がれるが、これでいい。

 互いに互いの姿が確認できない状態だがこれでいい……………………しまった、荒木寺さん半端ねえ。


 僕が見つけたのは、宙に浮かぶ薄氷。

 鏡代わりかよ。


 薄氷を破壊してから、石壁を飛び越える。


 羽団扇からの風で空中加速して、勢いそのまま斬りつける。


「荒木寺さんって石と爆発ばっかりだと」


「笑わせんな、それだけじゃやれねえよ」


 攻撃は横から飛来した石の杭によって手を突かれ、妨害。

 羽団扇を落とすが、ちょうどいい。


「拾わねえのか?」


「なんかしっくりこないと思ってたんですですよね」


 羽団扇には足で触れて、風を使って沙耶の方まで飛ばす。


「火吹きの左腕―――なんだか、こっちのがいいや」



羽団扇の存在を若干忘れてた

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