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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
四章   秘術篇
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溺愛

書くのが楽しくて、見せるのに遅れました

 店に着く頃にはすっかり日も暮れて真夜中。

 日付も変わっている。


「流石に誰も起きてないかな」


 店の店員達は皆、眠るのが早いのだ。

 以前猫宮さんと沙耶が女子会をした際は相当夜更かしをしたそうだが、それ以外では十二時より後に起きている姿を見たことがない。


 扉を開いて、昨日ぶりの店の景色。

 歩くたびにミシミシと音を上げる階段を登って、二階に行き、久しぶりの自室へ。


「あ、お帰り」


「久しぶり〜」


 今日やってたか。


「ただいま。女子会?」


「そう! 前回は猫宮さんのお部屋だから今日はこっちで。邪魔だったらお開きにするけど、大丈夫?」


 上目遣いで沙耶が言う。

 なるほどね。

 元から邪魔だと言う気はないが、しかしこれは。


「いや、今日は寝る予定なかったしいいよ。荷物置きに来ただけ」


 楽しんでるなら水を差すわけにはいかないな。

 怪現の練習からは明日からの予定だったけど、まあいっか。


「それじゃあまた明日」


「はーい、またね〜」


 沙耶は元気だが、猫宮さんはもう眠そうで、久しぶりと言って以来ずっとぼーっとして黙っている。

 明日の六時ごろなら二人とも起きているだろうか。


 そのくらいの時間までやることは山積みだ。




 ****




「ミア、準備は?」


「完了しています」


「よし、じゃあ行こうか」


 そう言って二人は車へ乗り込む。


 ミア・オートドールという名の彼女は、基本喋らない。

 喋れないのではなく、喋らない。

 理由は主人の命令ではなく、彼女にしては珍しい私情。

 最低限の情報以外を、主人以外に知られたくないのだ。

 己は主人の物故に、主人の命令なしでの個人情報の流失を避けるべきだと思ったのだ。

 自分以外のミアにはしゃべる物もあるが、自分だけはこの信念を曲げはしないと自棄気味な所もある。

 しかし―――そんな信念も自棄も、全ては異常なまでの主人への親愛と忠誠故だ。


 主人は、ミアの術式である分裂を気に入っている。

 戦闘力こそ分裂しようと無に等しいが、情報収集には向いているし、危険な場所に人を向かわせなければならない状況でも分裂体を向かわせればミア本体は安全だ。

 本人は分裂体に向かい離れた場所から指示を送り操る。

 至って安全なお仕事だ。


 さらにこの分裂の素晴らしい特徴。

 誰にも誰が本体か見破れないのだ。

 ミア以外には、見破れないのだ。

 ポールにも、九尾苑にも。

 屋比久童磨ですら見破れぬ。

 神尾沙智ならば一眼で見破るだろうが、それは彼女の無尽蔵な妖力とそれの操作性、正確さ、そして砂埃一粒、空気中の成分すらも判別出来るほどの敏感さがあってこその芸当だ。


「さて、報告をくれるかな」


 そういう主人に、ミアは頬を赤て言う。

 溺愛してやまない主人に、十年間己の目で見て得た情報の全てを伝える。


「まず―――あの愚者達は景様と戦うつもりですわ」


 主人、柏崎景にそう伝える。

 頬を赤て、うっとりとした表情で。


「そうか、それはいい知らせだ」

運転も、別のミアがやってます。

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