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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
四章   秘術篇
132/164

もう一つ

 退屈だ、今日は弱い敵しか来ない。


 当然―――来ない方がいいに決まっているが、それにしても退屈。

 倒し方に工夫をしてみたりしているが、退屈。

 具体的には、背後に回って首の骨を砕いたり酷い脳震盪を起こさせたりして、なるべく部屋が汚れないような対処のみをしている。


「退屈そうだね、あんな大量の記憶を一気に戻したのは初めてだし、感覚と現実が合わないかな?」


「ええ―――昔の僕と今の僕じゃ地の身体能力も違うし、微妙に合わないんですよね」


 それに、一つ気になっていることもある。


「そういえばなんですけど―――ポールさん、二つ目の怪現って聞いたことありますか?」


「いやあ、聞いたことはないね。でも―――使える者がいるなら、その人は間違いなく最強の一人なんだろうね」


「最強、想像つかないですね」


「まあ僕もだよ。挙げるなら神尾沙智とかなんだろうけど、何せ実際に見たことがないからね」


 僕だけが知っている、二度目の怪現初体験の感覚。

 目が覚めてから気づいた―――今の僕は、怪現を変えられるかもしれないということに。


 もしそれが出来たなら―――例えば炎帝からもう一つへの素早い切り替え。

 そんな怪現は一人一つの前提を利用した戦法が使えるかもしれない。


 当然―――怪現の能力次第ではそれだけでこちらの戦いに於ける手札が増えるわけだし、使えるようになって損などない。


 強いて言えば習得出来なかった場合の心配が残るが、そんなこと考えるだけ無駄なことだと。

 生憎僕は、逆上がりの練習をしたとして、もし一度も成功しなかったらのことを考える様な大馬鹿者ではないのだから。

 その筈なんだ。

 そうだろう、昔から僕はそんな奴だろ?




 ****




「お世話になりました」


「こちらこそ、色々と大変な時期だったろうに来てくれたこと有難く思ってるよ」


 そんな話を少ししている間に、ミアさん達が僕の荷物をヘリに積み終える。

 自分で帰れるような距離だが、態々ヘリを用意してくれたので有難く乗せてもらうことにしたのだ。


「また会おう。次は柏崎と戦うときだ」


「ええ、また!」


 こうして、僕の仕事は終了した。

 思い返せば一週間にも満たない期間だったが、得るものの多い四日間だった。

 幾つもの新しい術に、大量の実戦経験。

 その他にも柏崎の情報に母さんの情報。

 あと、帰ってからやるべきことも見つかった。


 取り敢えず帰ったら休めるし、今日乗り越えるべき事態はあと一つ。

 ここへ来るとき同様、全く喋らないミアさんと二人っきりのこの空気に耐え切れ僕。




喋らない相手と二人っきりの時間ほど生きづらい瞬間はない。

そんなことより、漸く長いお仕事終わりましたね。

一区切りついたって感じ

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