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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
四章   秘術篇
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譲渡

 今後のやること。

 まずは柏崎の居場所特定だが、もう済んでいる。

 居場所特定するための小豆の術は、相手の遺伝子が必要なのだ。

 今回僕を見つけるのに使ったのは、僕の泊まったホテルの部屋に落ちていた髪の毛。

 柏崎特定のために使ったのは、以前の戦いで散らばった血液と肉片だ。

 大体は再生に使われていたが、ほんの僅か残っていたらしい。


 現在居場所、都内の商店街。


「じゃあ、いつ突入しましょうか」


「しないよ?」


 衝撃。

 間も開けずに返された言葉は、僕の想定していたものとはかけ離れていた。


 しない、突入しない、攻め入らないの意。


「まさか、殺す気ないんですか?」


「というより、殺せないことが分かっているからどうすればいいか困ってるんだよ。やつの術の詳細が分からない限り、封印のために時間を稼ぐ余裕もないしね」


 まあ、確かに。

 しかし、今回の僕は知識の土産を持ってきたんだ。

 古本屋故にあった古い情報、もしかしたら昔の僕も使ったかもしれない、今はもう知る人の少ない技術。


「もしかしたら、やつの馬鹿みたいに強力な術の原因は分かるかもしれませんよ」




 ****




 一度古本屋に戻って沙耶と話した際、沙耶が一つ心当たりがあると言った。

 それは、術師御三家のみに伝わる妖力操作の最高級技術。

 まず前提として、人の体内で別の人物が妖力を操るのは不可能と言われている。


 何故か、簡単だ。

 体内は妖力で満ちている。

 相手の妖力が満ちた空間で、自分の妖力のみを分別して操作するのは不可能。

 しかし、操作しないならばどうだろうと昔一人の術師が言った。

 即検証。


 手から離れた位置に術を出すように、相手の体内に妖力を出す。

 するとどうなったか、消えたのだ。

 消滅、消失、失踪。

 突如として、消え失せたのだ。

 このような事態は、それまで確認されて来なかった。

 異例の事態であり、新情報だったのだ。

 術師達は次第に相手の体の中に出す妖力の量を増やした。

 そして最後、自分の妖力を回復させるのに最低限必要な、怪現でも使わない妖力までも相手の体内に出した瞬間、術師達は新たな知識を手に入れたのだ。


 体内に別人の妖力を取り込むと、溶けて吸収。

 自分の妖力へと変化。

 自分が今後永久に妖力を使えなくなる代わりに、妖力を譲渡出来るのだ。


 この技術の使用を前提として僕がした推理はこう。


 嘗て交際関係にあった神尾沙智と柏崎景だが、何らかの形で二人は命の危機に陥る。

 沙智さんは全ての妖力を柏崎へと譲渡して、柏崎だけでも状況の打破を狙った。

 そして手に入れた。

 あの出鱈目な強さの術を行使出来るほどの妖力を。


 常にどんな傷を負おうと即座に回復できるほどの、妖力を。




新情報出すの楽しい

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