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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
四章   秘術篇
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功労者

 あの後沙耶と少し話してから、僕はすぐにポールさんの会社へと戻った。

 空を移動して、屋上からこっそりだ。


「ただいま戻りましたって……………………え?」


 僕が会社へ戻ってすぐにポールさんの元へ行くと、目を疑うような光景。

 疑いたいし、覆いたくもある。

 いや、疑ったり覆ったりする前に、すでに僕は目を瞑っているのかもしれない。

 目を瞑って、夢の中。

 それだったらこんなあり得ない光景も、見てしまうかもしれない。


「あ、痛い」


 頬を抓って痛くなかったら夢って確認方法は、嘘なようだ。

 だって、そうでなければ。


「おかえり―――こちら君奪還の再功労者、夢屋小豆くん」


 部屋の中にはポールさんと、先生と、シェリーと。

 夢屋小豆。


 なんで、あの日全身穴だらけになった筈の夢屋小豆が、ここにいるんだ。




 ****




 ポールさんの説明ではこう。

 あの日小豆は全身穴だらけにされたものの、全てが致命傷になり得る位置から紙一重で擦れており、骸隊が死体として処理する予定だったのを、治療したらしい。

 これが偶然か端蔵の思惑通りかは知らないが、もし前者だとしたら運が良すぎる。

 もしこの世界が五角形のパラメーターで人の情報が分かる仕組みならば、運の位置はユニコーンの角の様に尖っているだろう。


「で、昔ずっと君の監視で君を見続けていたこの子なら攫われた君の居場所も分かるんじゃないかってね」


 まあ、納得。


「でも―――よく協力してくれたね。普通生きてたら、僕のことを怨んでると思うんだけど」


 僕は言った。

 嘗ての敵に向かい、冷静に言った。


「怨んでなんてないさ。寧ろ、僕は君のファンさ。それに、報酬も貰ったからね」


 ファンねえ、変なことを言う。

 僕のファンって、どこにそんな好きになる要素があるんだか。

 それより一つ、気になる言葉。


「報酬、それって僕もなんかしたほうがいいやつ?」


 僕が助けられたのだから、当然出来る限りのことはやる。

 でも、突然命を掛けろなんて言われたらそれも当然だが無理だ。


 そんなことを考えていると、答えたのは小豆ではなくポールさん。


「書籍化だよ。報酬は、彼の書いた君の小説を僕が自分の財布から金を出して書籍化してやるのさ」


 てことは、僕も貯金を叩いた方がいいかな。

 それにしても、書籍化って。

 ポールさんの会社って携帯会社だよな、どこかの出版社にら金を渡したのだろうか。


 あと、また新たに気になる言葉追加だ。


「あの、僕の小説ってなんですか」


「ああ、小豆くんが書いた君の戦いだよ。君を助けるための報酬なんだ、世に自分の戦いがフィクションとして広まるのは恥ずかしいだろうが、まあ耐えてくれ」


 小っ恥ずかしいって次元じゃないな。

 もし今後書店でその本を見かけた暁には、顔と左腕から火が吹き出そうだ。

自分より先にキャラに書籍化された

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