救出
「………………ここは」
見覚えのある摩天楼。
「やっと目覚めたか。丸一日も寝ておったぞ」
聞き覚えのある己龍贋圭の声。
そうだ、僕は鏡を使って昔の記憶を。
「どれほど戻った」
「えっと…………あ、敵地」
駄目だ、まだ寝ぼけているのか頭がよく回らない。
「とりあえず、帰んなきゃ。樋口さんのとこ、沙耶のとこ行かなきゃ」
「樋口の名…………そうか、あの戦いを見たか!」
「ん―――ああ、ここば己龍のとこか。僕帰るから、さよなら」
少し目が覚めてきた。
そうだ―――僕拉致されて、なんか流れで記憶を戻すことになったんだ。
「さよならて、お主ここがどこか分かっておらぬじゃろうて」
「まあ、高いところから見て帰るから迷子にはなんないよ」
「そうじゃない。お主、この己龍の家から無断で帰れると思っておるのではないな?」
寝起きで戦うのか。
気が進まない。
まあ、やるしかないならやろう。
「拉致られて帰んのに、許可は要らねえだろうよ」
「……………………まあ良い、またおいで」
「え、マジで」
「マジじゃよ。大マジ」
突然の言葉で、完全に目覚めた。
「美也子の息子よ、迎えがもう時期来る。孫の顔を見れただけで、今回は満足しておこう」
「おい、今なんて―――」
そう言った瞬間、背後の壁が破壊される。
「いた! 宗介、帰るよ!」
「ポールさん、シェリーまで。ちょっと待って!」
言うが、無理そう。
体が触れられもしていないのに引っ張られてる。
シェリーの術か。
「宗介、またおいで」
そう、贋圭は言った。
とりあえずここには聞かなきゃいけないことが出来た。
だから、僕は答える。
「ああ、また来るよ」
****
「改めて、おかえり」
空、謎の紙が集まって出来た鳥の上で言われる。
「えっと、ただいまです。ありがとうございます」
頭を下げて礼を言った後に、一つ疑問。
「僕の居場所って、どうやって分かったんですか?」
「ああ、今ここにはいないけど協力してくれた人がいてね、その人の術だよ」
人脈の力だったか。
なんか、社長っぽい。
「とりあえず色々あっただろうから何があったか聞きたいんだけど、それより先に行きたい場所とかってあるかな?」
「あります」
「おっと、即答。何か用事でも?」
「ちょっとでいいので、店に…………」
「ああ、なるほどね。いいよ、送るよ」
魅力的な提案だが、謹んでお断りする。
「店の方向だけ教えてもらえれば、自分で行きますよ」
「了解、あっちの方だよ」
ポールさんの指差す方向を確認して、鳥から降りて宙に立つ。
「それじゃあ、少し経ったら会社に戻りますので」
「了解、待ってるよ」
再度一礼してから、空を蹴り跳ぶ。
「っとその前にシェリーも、ありがとう。今度絶対端蔵探すからな」
そう言ってから今度こそ、僕は跳んだ。
やっと昔の話終わったね、長かった。