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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
三章   鏡篇
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限界

 上手くいかない。

 でも、頭切り替えよう。


 常套手段でダメなときは、普段やらないことを。

 おかしなことをすればいいんだ。


 例えば、こんな土壇場で初挑戦のことをするとか。

 限界を、超えるとか。


「よし、どこを越えようか」


 悪癖。

 土壇場になると、楽しくなっちゃうんだ。

 駄目だな、こればっかりは矯正しなくちゃ。

 いっそ記憶でも消して別の人生を歩めば治るのかな。

 いや、無理そう。


「独り言している場合じゃ、無いじゃろう」


 そう言って篠矢は爆破によって砕け散った岩に触れる。


「雨のような落石、よく楽しんでおくんじゃな」


「我が身―――烈火の元にあり。攻術詠唱術師、焼風(しょうふう )


 落石を吹き飛ばして、あわよくば篠矢が焼けてくれないかと願い、叶わない。


「よし決めた」


 どこで限界を越えるか。

 新しい詠唱術師を覚えようと思ったが、辞めだ。


 僕はこの術を使う方法は知っているが、成功はしてない。


 大丈夫、今なら出来る。

 左腕は肩まで丸焦げで罅割れてるし、大分妖力を消費した。

 つまり、ベストコンディションだ。

 燃えるような、イメージ。


「怪現、炎帝」


 あら、失敗。

 いけると思ったんだけどな。

 でも、感覚的にはいけそうだ。


「怪現、彼辺此辺」


 この場で、聞こえちゃあいけない声が聞こえた。


「お手本、見せに来たよ」


「端蔵、樋口さんまで。まさか、もう十四万人を?」


 姿を確認すると同時、樋口さんは走っていた。

 誰に向かって?

 篠矢に、違う。

 僕にだ。


「おいおい、敵間違えてる―――」


「味わった方が早いでしょ」


 そう言って樋口さんは僕の頭に触れる。

 ああ、確かにこりゃ、彼辺此辺だ。

 樋口さんらしい。

 上下左右前後、方向が彼辺此辺に感じる。

 景色は歪んで見えるし、すごく気持ち悪い。


「なるほど、よく分かったよ」


 要は、認識の違いだ。

 僕が思ってた樋口さんの術式は、空間の方向をサイコロの面みたいにコロコロと回すような術式だった。

 しかし、事実は歪めて力尽くで捻じ曲げるような術式。


 僕の術も、僕が想像した火力重視じゃなかったんだ。

 燃え盛る炎よりも、静かにあり続けるもの。


「怪現―――炎帝」


 これだ、間違いなく、これだ。

 これ以外に何があるのかと叫びたくなるほどには、これだ。


 手に感じる、確かな妖力の感覚。


「さて、別れは済んだかの?」


「悪いな、待たせて」


 篠矢に言ってから、樋口さんに目を向ける。


「やっちゃっていいかな?」


「ええ、おねがい」


 篠矢を殺す許可を孫娘から得て、決行。

 この怪現、使い方が不思議とよく分かる。


 さっきまでは前菜、ここからがメインだ。

こいつ、怪現使えるんだ

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