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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
三章   鏡篇
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奥の手

 樋口さんは、まあ平気そうかな。

 今遠目で見たところ、耐久ならいくらでも出来そうだ。


 前提として、この前ピンチだったのは一人で攻撃を返す必要があったからだ。

 今回は違う。

 なんせ、生き延びるだけでいいのだから。


 自分の周りの方向を外側へ向けるだけで、全ての攻撃は樋口さんには決して当たらない。


 なら、僕は大元へ向かって平気だ。

 一番妖力が密集している位置へ、宙の足場を蹴り移動。


「見っけた」


 宙から降りることなく、左腕を向けて言う。


「一の指、火遊び」


 言うと同時に親指を振るい、炎の玉を飛ばす。


「一折目―――爆」


 そう言えば爆発が――――――爆発が、起きない?


 僕がそう思い、自分が放った術の妖力を探ろうとした瞬間だった。

 僕の背中がや、焼けたのは。


「二折目、消ッ!」


 炎を消す。


「クソ、お前かよ!」


 完全に油断した!

 さっきまで戦ってた奴らの中には樋口がいなかったから、警戒を怠っていた。

 それに、お前がこの戦場にいるのかよ。


「死にはせんと。多少は育っておるようじゃな」


 樋口さんの祖父であり、樋口家現当主。

 樋口篠矢(しのや )


「老ぼれ、まだ生きてやがったか」


 最悪だ。

 こいつだけは、戦いたくなかった。

 一番厄介な術師の、こいつとだけは。


「お前が、樋口さんを殺そうとしてるんだな」


「そうじゃよ―――広まれば面倒じゃからの」


「だからって、孫娘を」


「孫娘? あんなもの、偶然選ばれただけの蛆と同じ生き物じゃ!」


 決定だ。

 こいつは、敵。


「残り短い生い先、ここで散らせ!」


 駆ける。

 駆けて、駆けて、駆けて、間合い寸前で、止まる。


「儂に、届きません」


 そう言って、篠矢は僕の髪を掴む。

 動きを止めたのは、僕じゃない。

 僕と篠矢の周りを囲む、術師達によってだ。


 突如現れた木の杭によって、四肢の動きを完全に封じられた。


「一の指、火遊び!」


「無駄じゃあ! それは神尾の杭、一本を二億で買い取った、妖力濃度百分の一よ!」


 神尾沙智。

 神の子と呼ばれた、一人の術師の名だ。

 彼女が作り出した木は、世界のどの物質よりも頑丈であったと言う。

 その理由は、彼女の込めた妖力の量だ。


 彼女が失踪してはや一年、未だ僕の詠唱術式に込める十倍は妖力が残っている。

 この木が作られた状態の頃から、妖力の濃度が百分の一に減って尚だ。

 これ二本あれば、龍捕獲だって容易だ。


 それが四本。

 どんなに足掻いても抜け出せないことを、納得してしまった。


 そしたら、奥の手。

 一番痛いし、後に響くし、中まで焼けるし。

 あんまり使いたくなかったな。


「|火吹き紅色終炎五の指《 ひふきべにいろしゅうえんごのゆび》、爆装(ばくそう )


ボスキャラと戦い始めて速攻奥の手ってどうなんでしょうね

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