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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
三章   鏡篇
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信頼

 百二百、当にその程度は殺したはずだ。

 しかし、桁が違う。


 十万だぜ、よく考えたら分かる。

 人一人で相手していい数じゃない。


 関ヶ原の戦いの死人でもこんないねえ。


 ああ、辞めたい。

 でも約束しちゃったし、頑張らなきゃ。


「落炎!」


 一先ず近くの敵を燃やして、少しの余裕を作る。

 こんな燃やして、山火事になったらヤバいな。

 まあ、そこは樋口の奴らが隠蔽するだろう。


 双炎で作った刀を飛ばして相手に突き刺して、新しく刀を作り直す。 


「火火《 かか》、炎の間に烈刻み、剣の鋒()が溶かす。千の鋒向かうは大地………ッ!」


「蛮勇の騎士は骨身で焼かす。攻術詠唱術式、炎の剣庭(えんのけんてい )ッ!」


 敵の息つく間もない猛攻に対処しながらの詠唱、最中は戦いに向ける神経が詠唱に向くため、攻撃を四回も喰らってしまった。


 一つは頭に、もう一つは右腕で、残り二人は胴だ。


 幸い、どれも皮膚を突き破りはしなかったが、腕は罅が入ったかもしれない。


 しかしまあ、それも今の術を発動出来たことと比べればトントンだな。


「そんな術も覚えてたか、相変わらず詠唱術式の習得が早いね」


 声が聞こえた。

 振り向くと同時、眼球スレスレを稲妻が通過する。


「やあ―――さっきぶりだね、宗介」


「ああ、今度は戦うか?」


「違う。今に限り、僕が味方をしてあげよう」


 突然現れた端蔵と僕の会話に、敵は眺めることしかできない。

 僕らが手を組めば自分達が絶対に負けることを知ってはいるが、僕らの話に割って入って攻撃した結果、生き残る可能性が零だということも知っているからだ。


「なんだよ、共闘は嫌だったんじゃないのかよ」


「共闘じゃあないさ、君は今から敵の大元に突っ込む。僕はその間ここで戦う。共になんて、戦っちゃいない」


 屁理屈だ。

 しかし、納得は出来た。

 今に限り僕の味方になろうって理由も大方想像はつく。

 どうせ、ずっと戦い続けるだけの展開が全く変わらないこの状況を、見飽きたのだろう。


「分かった、じゃあ頼んだ」


「了解、任された」


 僕はそう言ってから、敵の妖力が一番密集している位置を探る。


「じゃあ、行くわ」


 言うと、静止の声。


「この武器、使えるようにしといてよ」


 端蔵が言っているのは、恐らくさっき僕が出したばかりの炎の剣庭のことだろう。


「燃え移らないようにしとくよ。じゃあ今度こそ」


「はいね、バイバイ」


 そう言って今度こそ、跳んだ。

 端蔵、信頼してるからな。

 敵だからこそ、何度もお前と戦った僕だからこそ、お前の性格を、実力を信頼してる。

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