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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
三章   鏡篇
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開戦

 さてここからが問題。


 心の準備は済んだから、あとは体だ。

 妖力、万全。

 体力、万全。

 五感、冴えてる。


「よし、戦うなら今だ」


 僕の戦い方は敵に紛れて静かに戦うには向いてない。

 それに、十万人以上から隠れながら全滅させるとか、無理に決まってる。


 よし、正面突破に決定。

 姿が薄らと見え始めた敵軍に向けて、左手薬指を向けて言う。


「火吹きの左腕――四の指、獄矢」


 薬指に沿うような形で、炎の弓矢。

 右手の指二本で炎の弦を掴み、引いて、放つ。


 奴らからすれば、暗闇に突如現れた攻撃。

 先制攻撃はまず成功だ。

 ここから、畳み掛ける。


「一折目、(れつ )!」


 瞬間、放たれた炎の矢は分裂。

 一本から二本へ、二本から四本へ、四本から八本へと増える。

 まだ終わりじゃない。


「二折目、嘴!」


 炎が矢から鳥へと姿を変える。


「来たぞ! 総員、術式用意!」


 敵軍の者が一人、声を上げる。

 それとほぼ同時、炎の鳥は敵軍へと突撃。

 それを術で撃ち落とそうとする者もいるが、鳥の機動力で全て回避だ。


 敵軍に衝突したタイミングで、爆発。

 命なき生物爆弾だ。


 六十は殺せたか。


「さて、お客人。帰るんなら今だぜ」


「総員、突撃!」


 聞く耳、無し。


「蒼の双月啄む烏合。百獣の首を飾るは業火」


「詠唱術式だ、黙らせろ!」


 僕から一歩遅れて、敵軍も術を放つ準備を開始する。


「陽光墜とすは我が身を隠し、古強者の骨焦がす」


 発射。

 無尽蔵だと勘違いしてしまうような数の術が飛来する。


「防術詠唱術式―――焔叢( ほむら)


 飛来した術の多くが僕から外れた軌道だが、多くが僕に向かい進み、体を貫く。

 貫通、一つ一つなら大した威力は無いな。


「おい、なんであいつは落ちないんだ。全身………蜂の巣にしてやったのに。なんで!」


 敵軍の、一人が叫ぶ。

 恐ろしいものを見たように声を震わせて、叫ぶ。


 撃て撃てと、敵の多くが叫ぶ。

 絶叫する。


「やっぱ消費がデカイな」


 そう、本物の僕は言った。

 あいつらが撃っているのは炎で出来た僕の分身だ。

 いくら撃っても、僕にはなんの被害もない。


双炎(そうえん )


 そう唱えると、両手に炎の刀二本。

 炎の剣庭の劣化版の術だが、妖力の消費が少ない分、こちらの方が使いやすい。

 敵軍が僕の分身に必死になっている隙に、火吹きの左腕と、左手で持っている方の炎の刀を炎同士で繋げ、終わると同時に五人の首を落とす。


「ダミーだ!」


「うっさい」


 六人目。

 しかし、気づかれちゃったか。

 気づかれずに十人はいけると思ったんだけどなあ。


 怪現。

 逸早く僕に反応した三人の口からそう聞こえた。


雷聖(らいせい )ッ!」


冥鏡( みょうきょう)


明両地突( めいりょうちとつ)ゥ!」


 一人は足に雷を纏ったように、一人は手が通過した位置が鏡に、一人は何が変化したか分からないが、地面に両手で触れている。


 とりあえず、斬ってみようか。

 そう思った瞬間だ、足に雷を纏ったような男が動く。


「速すぎて、見えなかった?」


 背後。

 なるほど、雷と同じ速度で走れる怪現ね。


「いや、遅い」


「言ってろッ!」


 蹴り、これも速度は雷と一緒だ。

 この速度なら山程潰してきた。


「だから、遅いって」


 僕の顔付近まで迫る足を切断。

 膝下から、綺麗にスパンとだ。

 止まらず間に姿勢を低くして、腿の位置から両断。

 機動力を奪ってから、首元を掴んで投げる。

 狙うは敵一人の手が通過して鏡になった位置だ。


冥架(めいか )! 消せ――――――」


 触れると同時に、絶命。

 了解、即死エリアだ。

 鏡になって若干見にくいが、透明な方が見えにくいし、エリアは手が通過した位置で固定っぽいから、あの冥架とかいう奴も迂闊にエリアを広げられない筈だ。

 現に、動き回れば僕の行動範囲を狭められるものを、自分が当たる可能性を危惧してあまり動けていない。


 後一人は、今の足ビリビリが走る先を事前に知っていたような視線の動きをしていた。

 長い付き合いのコンビか、何かしらの術式かの二択。

 足ビリビリが死んでも全く感情が揺るがないのを見ると、恐らく後者だな。

 ずっと地に両手をつけているから、多分探知系の術式。

 自分の手に集めた妖力が地面と繋がって、地面に立ってるやつの動きが分かるってところか。


 先ず優先は、探知系の方。


「俺だァ!」


「了解した」


 僕が駆ける寸前に、探知の男は言った。

 バレてるあたり、動きが分かるというより、地面に立っている者の少し先の未来が分かるような予知に近い物かも知らない。

 まあ、バレてても止まらんけども。


 駆ける僕目掛けて、氷の槍と僕が斬った首が飛来。

 斬り伏せて、進む。


 探知の男が間合いに入ると同時に、一閃。

 男は手を地面に付けたまま身を仰け反って回避する。


「二の指、緩火」


 衣服に火をつけてから、両手を切断。

 突然、さっきまで手を地に付けていたんだから、消火なをて間に合わない。

 慌てて自分の腕の切断面から噴き出るはずの血液で消火しようとするが、切断面は中までこんがり焼いてある。

 結果、血なんて出ない。


 あっという間に炎は広がり、全身を焼く。

 敵軍の術か水が飛来し炎は消えるが、それと同時に首と胸元を背部から刺す。


 それと同時、背後からは触れたら即死の鏡を出す男。

 正面からは土竜を人型にしたような妖。


 妖がこちらに向かい手を振るうと、地面が一部泥玉になって、こちらに飛ぶ。

 表面は泥のようだが、芯は硬いはず。

 泥玉を回避して、その先にいる鏡の男へ。

 男は見事回避するが、ほんの少し胸を押してやれば、自分の手から伸びた鏡に丁度頭が触れる位置。

 怪現三人、殺害終了。


 いやあ、僕はまだ怪現使えないから羨ましい限りだ。



怪現使える奴らが三人も出てきて、さらっと消えるのはギャグとしていつか使える気がする

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