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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
三章   鏡篇
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また後で

ごめんなさい、投稿遅れました。

 昔々、それは驚くような少し昔のこと。

 二人の男女と戦うために、とある貴族が十万を超える軍勢を作り上げたという。


 各国から繋がりのある術師を掻き集め、それでは足りぬと妖までも仲間へ加えて、軍勢を作り上げたという。


 双方の戦力差が一目瞭然かと思われたそんな戦いは、後にこう呼ばれるようになった。


 ――――――不死鳥前戦と、呼ばれるように。




 ****




「さっき自衛優先って言ったけど、アレやっぱ無し」


 言うと、樋口さんは両拳を握り、自分もめっちゃ戦うよ! とでも叫びたそうな顔とポーズ。


「じゃあどうやって戦うか、考えなきゃね!」


「いや、違くて」


「なるほど、逃げるのね! それなら―――」


「いや、それも違う」


 すると、少し驚いた顔。

 そこから少し考えるような仕草を取ってから、樋口さんは言う。


「そうよね、流石に一ノ瀬も逃げるわよね。分かったわ、またね」


 今度は、少し悲しそうな顔。

 表情がころころと変わる人だ。


「それも違う、全部違うよ」


 また、驚いた顔。


「逃げるのは無理―――敵の数は十万以上だよ、穴なんてない」


「え、じゃあ一体どうしろって…………」


「僕はここから少し離れて相手を蹴散らすから、樋口さんは僕なんか気にしないで自分だけ守ってくれればいい。というか、僕がそうして欲しいって、思ってるんだ」


 今度は更に驚いた顔をしてから、手で覆い隠してして蹲ってしまった。


「じゃあ、一つだけ約束してくれる?」


 大きく息を吐いた後に、顔を隠したまま言う。


「いいよ、何だって約束する」


「今度、一緒に学校行きましょ」


 思わず、笑った。

 内容にではなく、スケールの差に。

 十万を超える軍勢と、いつかの通学の約束。


「ああ、分かった」


 このあり過ぎるスケールの差、悪くない。


「じゃあ、また後で」


「うん、またね」


 なんだが、より一層やる気が湧いてきた。


 僕らは互いの顔を合わせることなく、別れる。

 見る必要がないからだ。

 見なくても、互いに分かっている。

 今見ずとも、これからも嫌というほど顔を合わせることになると。


 この戦いの後で―――例えば、通学なんかで。



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