忠告
一日目、殺した数、二百三十五人。
逃した数、四人。
生捕にした数、零人。
妖術の使用回数、二百三十八回。
負った手傷、零。
意気込んで戦い始めはしたものの、やっぱり疲れる。
一晩明かして、二日目。
今日は一先ず、下山して食料の補充だ。
なるべく人の多いデパートで、術師達が人目を避けて僕達を襲えない場所にいる。
「樋口さん、何食べたい?」
「味は今は気にしてられないわ。取り敢えず長持ちする缶詰とかがいいと思うの」
「そっか。あとそうだ、思い出したけど鍋とか買わなきゃ」
「コンロとかは?」
「手から火出せるし要らないでしょ」
「それもそうね」
そんな雑談を交わしながら、買い物を終える。
そして山へと戻る。
こうして何日も戦い続けて、僕たちには絶対に敵わないということを分からせる。
「呑気に買い物とは、自覚が足りないなあ」
声。
聞き覚えのある、声だ。
僕は振り返り、その声に応える。
「よお、端蔵」
「久しぶりだね、宗介」
そう、端蔵晴海。
僕と樋地旗さんの宿敵にして、古本屋の元同僚。
「彼との仲は、順調かい?」
「きちんと抑えた筈なんだけど、最近生捕にしたかったやつを一人殺されたよ」
「そうか、困ってくれてるようでよかったよ」
「おかげさまでね。呼ばれ方もまだ慣れない」
「ああ、今の君が一ノ瀬で、彼が魔封社。いやあ、よく考えられてるね。両方宗介だが、少し違う」
そんなくだらない話を交わしてから、本題。
「で、何の用だ」
「いやね、面白い話をしてあげようと思って」
「面白い話? なんだ、言ってみろよ」
「人に物を訪ねる態度じゃないなあ。まあいいや、教えてあげる」
嫌な笑みを浮かべ、ほんの少し勿体ぶってから、謎解きの答えを明かすように言う。
「宗介が今やってる戦い、明日で終わるよ」
「理由は?」
「そこまで言ったらつまんないじゃん。精々、足掻いて楽しませてよ」
端蔵は既に楽しそうに言った。
「一応聞くけど、助けてくれない?」
「やだよ、共闘なんて。バイバイ」
そう言って、去った。
明確な敵ではあるが今は樋口さん優先だし、人の目もあるから追いかけるわけにはいかない。
今は、雑談で終わりだ。
「ごめんね樋口さん。話に付き合わせちゃって」
「いいわよ、それより明日で終わりって…………」
「ああ、多分一斉襲撃とかがあるんじゃないかな。手っ取り早く済ませよう」
あっさりと言ってはみたものの、相手の数、戦力、戦略。
全てが未知数だ。
予想だと相手は七千、戦力は樋口の者三割ってところだ。
戦略は、ちょっと想像出来ないな。
「とりあえず、場所変えよっか」
僕は言った。
悩ましい現実から若干目を逸らしながら、若干目を向けて。
懐かしいキャラじゃ