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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
三章   鏡篇
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防衛戦

 先に仕掛けたのは相手。

 太陽が沈んだ時間の山の暗闇に、やつの来ている昨日の相手と同じ黒い衣装はよく馴染む。

 それを利用して、先ずは相手の一人が僕の背後へ移動。

 樋口さんを直接狙う。

 当然、させはしないが腹立たしいことこの上ない。

 小刀を一本飛ばすが、相手は回避。

 しかし樋口さんから離れた隙に蹴飛ばす。


「先にこの男を始末しろ!」


 司令塔の男が言うと、他二人は一言、御意と言った。

 この二人も声からして男だ。


 瞬間、三方向から風切り音。

 その音から位置を割り出して、飛んできた黒いナイフを回避する。


火火( かか)、炎の間に烈刻み、剣の鋒()が溶かす」


 相手の攻撃を回避しながら唱える。

 詠唱術式覚えたての者ならば難しいかもしれないが、僕ならば相手の攻撃を回避しながら、反撃しながらの詠唱が可能だ。

 慢心ではなく、僕には実際その程度の力がある。


「千の鋒向かうは大地、蛮勇の騎士は骨身で焼かす」


「言わせるな!」


 男の声に反応して、二人が僕に向かい駆ける。

 しかし、もう遅い。

 動きも、タイミングも、遅い。

 亀の歩みのようだ。


「攻術詠唱術式、炎の剣庭(えんのけんてい )ッ!」


 瞬間、辺り一面に僕の妖力一部が広がる。

 そして、その妖力は地面に突き刺さる無数の刀へと形を変え、燃え盛る炎へと姿を変える。


「叩っ斬る」


 近くの炎の刀を一本抜き、駆ける。

 すると、三人内一人が僕同様、こちらに向かい駆ける。

 互いが互いの射程範囲内に貼った瞬間、僕は炎の刀を、相手はさっき投げてたものよりも射程の長いナイフを、振るう。

 そして、衝突。


 互いの刃が拮抗し合う中、僕の背後から司令塔であろう男が現れる。

 恐らく昨日の相手と同じ移動系の術。

 突然ではなく、体の足部分から現れたことから、移動口を作るような術だろう。


 僕背後の男がナイフを振るうと同時、正面の男と拮抗し合う刃を引いて、相手のバランスを崩す。

 僕は二人の男の間から素早く抜けて、樋口さんの側へ。

 司令塔の男が僕優先と命令したからといって誰か一人が単独行動で樋口さんを狙わないとは限らない。


「緩い。三人で行動してるのに、連携がお粗末。一対一対を繰り返してるだけに感じるぜ。三対一でやらせてくれよ、なあ」


「よく喋る男だ」


「よく喋る隙を与えてくれるなって、言ってんだよ雑魚共!」


 言い終えると同時、男二人の近くにある炎の刀、四本を爆発させる。


 土煙から飛び出した男達は多少の傷を負ってはいるが、動きは鈍っていない。


 そう思った矢先、ナイフを投げて以降戦いに参加していなかった僕に蹴飛ばされた男が飛び出す。

 足に強烈な妖力。


 こいつ、怪現してやがるな。

 残念なことに、僕は怪現が出来ない。

 というより、する必要がない。

 僕の持ち味は、多種類の使える術だと己で分かっている。

 それなのに、一つの術しか使えなくなるような怪現を使うだなんて。

 僕の持ち味を、自分で殺すようなものだ。

 勿論、覚えて損はないので、今練習している術をマスターしたら覚えようとは思っている。

 僕の怪現はどのようなものなのだろう。

 高温に全妖力を注ぐのか、火力に全妖力を注ぐのか、楽しみでないと言えば嘘だ。


 まあ、そんなのは今はどうでもいい。

 問題は、この男の怪現がどのようなものか。


 いやあ、無駄。


 僕らしくないじゃないか、相手の術を考えるなんて。

 戦って、直接見れば無問題だ。


 そう僕が思った矢先、正解は現れる。


「お前も移動口かよ!」


 現れたのは、宙に浮く右脚。

 恐らく、足に集めた妖力で移動口を作り出して、何処にでも蹴りを瞬時に出せる、そんな怪現だろう。


 次の瞬間、今度はナイフ。

 これも宙に突然だ。


「おいおい、三人とも怪現したのかよ」


 短期決戦に持ち込む気だな。

 これは、厄介だ。

 考えうる選択肢で、一番の外れ枠。


 僕は三択を強いられたようだ。


 一、樋口さんを連れて逃げる。

 二、自分で戦うのを諦める。


「二決定、これも外れ枠だ。馬鹿野郎」


 一番の安全策は、二だ。


「起きろ魔封社。半分でいい」


 頭の主導権は渡さない。

 渡すのは、体だけ。


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