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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
三章   鏡篇
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貸し一つ

 樋口さんは僕の後ろに下がってくれたので、一応は安全。

 樋地旗さんぐらい強い相手が出てこない限り守り通せるだろう。


 相手は警戒しているが、そこまで強い妖力を感じないので、樋口さんが勝てないのは相性的問題だろう。

 樋口さんの術は空間の方向を変える術、視界で捉える限りは余程のことがない限り、地面などで相手を押し潰せる筈だ。

 つまり相手は視界に捉えられないような術の使い手。

 僕の獄壁のように目隠しを作るのか、高速移動で相手の視界に止まらないのか、それとも空間を移動するタイプか。

 あとは透明になったり、それくらいだろう。


 とりあえず対処できないパターンは無さそうだし、戦える。


 小刀を一本抜き、炎を纏わせる。

 炎を伸ばして、小刀の短い間合いを補う。


 小刀を右腕に持って、火吹きの左腕を発動。


「さあ、おいでな」


 瞬間、相手が動く。

 体制を低くして、駆ける。

 真っ黒の全身に張り付くような衣装も相まって、この夜中には姿を確認しにくい。

 しかし、小刀から伸びる炎の灯からできる影で居場所は丸わかり。

 子供だってそれくらい分かる。


 僕は獄壁を使って自分の姿を隠して、僕を見えていないまま相手が放ったナイフの一撃を回避。

 そのまま獄壁の上から飛び出して、小刀の炎部分で一撃。

 瞬間、相手の姿は消える。

 空間を移動するタイプだったか。

 だとしたら、移動先は僕を確実に仕留めるために、背後。


「じゃなくて樋口さんッ!」


 すとん。


 勢いよく飛ばした小刀が、樋口さんの背後へと移動した相手の頭に見事突き刺さる。


「はい終わり。大丈夫、怪我してない?」


「え……ええ。あなたこそ、怪我は?」


「僕は平気だよ、無傷」


 言うと、樋口さんの表情が少し曇って見える。


「私も、貴方ぐらい………………」


「ん、どした?」


「なんでもないわよ。それより、ありがとう」


「いいよ、ちょうど外にいたから来ただけだし」


 それを聞くと、樋口さんは立ち上がってスカートについた汚れを手で払って、言う。


「でも、ありがとうね。今度お寿司ぐらい食べさせてあげる」


「いや、ジュース一本ぐらいでいい」


「なによ、ジュースは貰うのね。ちゃっかりしてるわ」


「貰わなきゃ樋口さんの気が済まないでしょ」


 言うと、今度は曇った表情から一転。

 嬉しそうな、少し赤らんだ顔で樋口さんは言った。


「そうよ、私のことよく分かってるじゃない!」

読んでいただきありがとうございます。

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