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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
三章   鏡篇
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足止め

 しばらく進むと、知能のあるレベルまで育った妖が三体。

 ぐちぐちと能書きを垂れてはいるが、略称すると自分たちは主の命令によってここを守っている。

 通りたくば自分たちに勝て。


 つまり、得意強行策で良いということだ。


「行くぞ―――火吹きの左腕。二の指、緩火」


 瞬間、三人のうち一人の衣服に着火。

 一秒にも満たぬ時間で、その炎は衣服全体へと広がり、体へと燃え移る。

 それに駆け寄ろうとする一体を蹴飛ばし、焼ける一体と、驚いて腰を抜かした一体から離れた地点で口を手で多い、そこから炎を入れる。

 炎は口内を焼き、喉の気管を通り、肺を焼く。


 漸く腰を抜かした一体が立ち上がるが、もう遅い。

 僕は廊下の壁と床、天井に札を一枚ずつ飛ばして貼り、言う。


「一折り目、爆」


「テメェ!」


 瞬間―――妖の叫びも虚しく、緩火で全身が焼け焦げた妖の体が爆発。

 札の効果で廊下には焼け跡一つないが、隣にいたもう一体の妖は当然爆発に巻き込まれ、口や鼻から侵入した炎が内臓を焼く。


「勝ったし進むよ、じゃあね」


 もし誰かいるならば、当然やつらが守っていたこの廊下の先だろう。

 この程度の門番を置いて満足している程度の相手だ、強くはないだろう。

 妖三体を燃やし尽くして、札を剥がしてから進む。


 また暫く歩くと、ぽつぽつと水の溢れる音。

 水道の水滴だろうが、嘗て自分がここに通っていた年齢で、深夜なこの状況なら泣いて怖がっていたかも知れないな。


 僕が昔のことを懐かしんでいると、ふと音が聞こえる。

 足音だ。

 時間的に生徒ではなく見回りだろう。


 一先ず僕は水道脇のトイレへ身を隠す。

 札によって爆発音は聞こえなかった筈だが、妖を燃やし尽くした痕跡が残っていないか、少し心配だ。


 足音は一歩二歩とトイレへと近づき、通り過ぎる。


 安心して、僕がトイレを出た瞬間だった。


「ばあ」


 ―――一閃。

 僕は火吹きの左腕を消した左手を振るう。


「なによ、そんなに驚かなくても」


「なんだ、樋口さんか」


「なんだって何よ、折角心配して来てあげたのに」


 樋口さんは頰を膨らませて言う。

 彼女は普段学校ではこんなことをしないので、他の生徒が知らない一面を知っていると思うと、何だか少し嬉しくなってしまう。


「この先にいるわね」


「ああ、でも多分そんなに強くないよ」


「そう、じゃあ任せようかしら」


 そんなふざけたことを言って、僕らは進む。

 戦いのために、相手を殺すために、行く。


参考までに、この廊下で足止めしてた奴らは龍と戦う前に出てきた己龍鉄心ぐらい強いです。

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