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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
三章   鏡篇
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樋口

 樋口沙耶、彼女は僕と同じ学校の生徒。

 成績優秀、才色兼備、文武両道。

 教師生徒、双方からの評価も良く、所謂完璧超人だ。

 更に付け加えるならば、実家は超の付くほどの金持ちで、頻繁に政治家などが出入りしているらしい。


 そんな隙のない彼女だが、何故僕がそれを語るのか。

 彼女には、秘密があるのだ。

 僕だけが知っている、僕と同じ秘密が。


 樋口さんは、妖術が使えるのだ。

 それを知ったのは先月、高校入学直後だった。


 僕が樋地旗さんに言われて妖を退治しに向かうと、そこに樋口さんは居た。

 僕と同じで、妖の退治に来たのだろう。

 そのときから、僕と樋口さんは互いの秘密を共有している。


 そんなことを思い返しながら下校していると、背後から声がかかる。

 丁度考えていた、樋口さんだ。


「仕事よ、付いてきてちょうだい」


 それだけ言って、樋口さんは跳ぶ。

 制服のスカートを履いているというのに、全く気にせずに、すぐ近くの民家の屋根まで跳ぶ。


 樋口さんはいつもこうだ。

 突然現れて、仕事を手伝うよう言ったら、先に行ってしまう。


 一度放っておいたこともあったが、次の日とても機嫌が悪くなってしまい面倒だった。

 仕方ない、行こう。


 僕も跳ぶ。

 樋口さんに追いつくのは容易だった。

 しかし、追いつくと同時に、速度を上げて逃げられた。

 追いかけっこのつもりか、速度を下げて待っていてくれたのか。

 間違いなく前者だと思いながら、追う。


「ここ? 確かにこりゃ多い」


 辿り着いたのは、僕らが通うのとは別の学校。

 昔僕が通っていた小学校だった。


「最近この学校で、変死体が発見されたのよ。目がくり抜かれ、舌は切断。全身の肌が爛れていたそうよ」


「生捕、退治、どっちがいい?」


「退治よ」


 妖の数は一、ニ、三、四、いや、もっと。

 少なくとも二十は居る。


「旧校舎にある札、それのせいで妖が集まってるらしいわ。子供が拾って貼ったか術師が貼ったかは分からないけど、危険だから剥がさなきゃ駄目ね」


「了解、じゃあ僕は退治に専念するから札は任せた」


「おーけー、頼んだわよ」


 言って、別れる。


 妖が居るのは本校舎、僕はそちらに向かう。

 まず下駄箱に、一体。

 人の形は保っているが、小さな雑魚が少し成長した程度。

 妖がこちらに襲いかかり、左腕の大振りを回避と同時に、カウンターで頭を右拳で殴り抜く。


 すると、本来血液。

 本来このレベルの妖には血液は通っておらず、妖力だけで体が構成されているはず。

 つまり、これは本物の血液ではなく何かしらの術だ。


 妖な体を飛び出した血液の僕の間に挟み、次の瞬間に起きた爆発を防ぐ。

 血液を爆発させる術、このレベルの妖で術を使うのは、本当に珍しい。

 千に一つ居たとしても奇跡だ。


「術師がいるな」


 そう、勘から出た、推測の域を出ない意見を呟き、僕は進む。


記憶改変前宗介は、術を使わなくても今の宗介より十倍は強い。

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