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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
二章   龍篇
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無茶

 逃げなければならない僕だが、まず無理だ。

 幸い、二人が戦っている間に走れる程度には回復したが、間違いなく千輝には追いつかれるだろう。

 術も使えない今、どうするか。


「敢えて戦おうか」


 己を鼓舞するように言ってから羽団扇を拾い、完全に妖力零で戦う覚悟をする。


 一歩、また一歩と進み、僕が千輝と柏崎の視界に侵入したであろう瞬間、左側頭部付近に羽団扇を構える。

 それと同時に強い刺激。

 僕の狙い通り、刃と千輝の拳は衝突していたのだ。

 柏崎もいる今、千輝は戦いを長引かせようとはせず、僕を一撃で殺しにくるはずだ。


 ならば、僕はそれを利用する。


 次の瞬間、腹に千輝の蹴りが。

 大砲で撃たれたような衝撃だ。


 裸一つで北極に乗り込むような無茶。

 この無茶こそが、最善の道だ。


 僕は根性と日頃の修練で身につけた筋力のみで踏ん張り、蹴飛ばされずに済む。

 地を蹴り、駆ける。

 勢いがついた頃に跳ね、宙で体を回転させながら短刀を二本投擲。


「妖力を纏ってねえな、舐めてやがんのか?」


 そう千輝が言うだけで、凄いプレッシャーだ。

 嫌になる。

 息を吸うだけで肺が痛み、歩み跳ぶだけで足は痛んで骨が軋む。

 しかし何故だろう―――無性に心地よい。

 この時間が、この戦いが、永遠に続いてほしい。


 僕は千輝の足払いを回避して、それと同タイミングで千輝に触れようとする柏崎を僕は斬り、再生。


「怪現解けて今で二割以下。まあいいか」


 千輝がそう言って、僕と柏崎二人から距離を取る。


「おいてめえ、お前は俺がこいつを殺さなきゃ帰んのか?」


「僕かい? 殺さないなら………………まあいいとしようかね」


 柏崎が言うと、千輝は仕方なさそうに溜息を吐き、僕に言う。


「ならもういい―――殺さねえ。代わりにめんどくせえが、付いてきてもらうぜ」


 それと同時だった。

 僕の後頭部に、強い刺激が、鈍痛が響いたのは。

 僕の意識は薄れ、薄れ、沈んで消えてゆく。


 次に目が覚めたときには、休めることを願いたい。

無茶こそが、最善の道だってセリフ我ながらすこ

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