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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
二章   龍篇
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不死身

「助けに来たよ、宗介」


 聞き覚えのある声、聞き覚えのあるセリフ。

 だが、この声はこのセリフを言っていた声ではない。

 僕は叫んだ。

 全く肺に酸素が残ってはいないが、それでも全身の力を振り絞って、立ち上がりながら叫んだ。


「お前……柏崎か!」


「やあ、最近ぶり」


 そう、九尾苑さんではない、声の主は柏崎景だった。


「しかし、助けに来たのにお前とはいただけないなあ。まあいいんだけどさ」


「おい、てめえなんのつもりだ」


 千輝は言う。


「今宗介を殺されては困るからね―――悪いが、邪魔させてもらうよ」


 瞬間―――柏崎の肉体は爆散した。

 血と肉片を辺り一面にばら撒いて、ズタズタに。


「んだよ、雑魚か…………」


「いやあ――突然バラバラにされちゃ困るね」


 言ったのは、傷一つなく元通りの体になった、柏崎だった。


「どうしたんだい? 不思議そうな顔しちゃって。ああ、服が元通りなのが不思議か。なに、妖具なのさ。僕の妖力を吸って、吸った分元の形を保とうとする。ただそれだけのね」


「見りゃ分かる、明治の浜崎家四代目の作品だ。んなことより、なんで生きてやがる」


「気にすんなよ。逐一気にしてちゃ―――早死にするよ」


 瞬間、柏崎の首が刎ねられる。


「なんだ、単純だな」


 千輝は言って、一つ舌打ち。


「てめえ不死身だな?」


「ご名答! まあ、嬉しくはないんだけどさ」


 不死身。

 妖、神、それら含めて怪異ならば別段珍しい言葉ではない。

 不死鳥、吸血鬼、その他諸々。

 既に死んでいる幽霊なんかも、不死身の一端かもしれない。


 しかし、見るのは初めてだ。

 肉片の再生は、想像していたより気持ち悪い。

 大脳の中心に最も近い肉片に向かい、他の肉片が集まり、人体の形を構成する。

 今の首の再生は、僕が斬ったとき同様斬った先からくっつく。

 殺しようがない。


 されど、勝ちようは何通りでも。


「さて―――己龍の、尻尾巻いて帰ってくれるなら僕は手を出さない。どうする?」


「当然、二人まとめてぶっ殺す!」


 瞬間―――柏崎は手を振るい、それを千輝は肘から手刀で切断する。

 次の瞬間には千輝が足払いで柏崎の足場の安定を奪い、縦に身を回転させて顎目掛けて膝蹴り。


 僕も戦えるものならば戦いたいが、さっき一瞬気絶したせいで妖力の操作が途絶え、怪現が解けてしまった。

 つまり、今から三日は術を使えないのだ。


 歯痒い。

 それに、どちらが勝っても僕には損。

 なんとか逃げなければいけいな。


主人公、一歩も動かない。

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