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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
二章   龍篇
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来客

 先生が話を終えると同時に、いや、その最中から僕は思う。

 そんな術師が、そんな生き物がいるのかと。


 望むもの全てを守れるであろうその力に僕は少し嫉妬して、それ以上に憐れんだ。

 それ程の力があれば、皆と見える世界は違うのかもしれないと。

 心から分かり合える相手は、嘸かし見つかり難かろうと、憐れんだのだ。


 先生が九尾苑さんも、全ての術師が集まろうと敵わないと言うほどの実力。

 そんな実力者が失踪する事態なんて、想像するだけで身震いがするなんて次元じゃない。

 想像したくないとも違う。

 想像為し得ないのだ。


 どうすればそれほどの高みへ至れるのか、そう思いを馳せていると、ポールさんが言う。


「どうりで、神尾沙智の情報だけは恋人関係以降全く探ることが出来なかったわけだ」


「当然、沙智の情報を垂れ流しになんぞしておいたら呼んでおらぬ客どもが溢れて群がい面倒だからの」


 先生はしみじみと言う。

 嘗ての沙智さんとの時間に思い馳せるように言う。


 しかし、そんか時間は突如として破壊された。

 僕ら三人のうち誰かが何かしたわけではなく、呼んでいない客の来訪によってだ。


「よう、その読んでねえ客ってのは、まさに俺だな」


「お前、己龍千輝!」


 そう、突如現れたのは己龍千輝。

 以前九尾苑さんからの依頼で僕の援軍として来た男だが、今回はどうして。


「何の用だい? 今は大事な話の途中だ」


 ポールさんが言うと、千輝は歯を剥き出して笑い、言うのだ。


「気にすんな――今回の仕事は宗介、そいつの抹殺だけだ」


 瞬間、僕は火吹きの左腕を発動。

 そしてそれ以上の速度で、千輝は僕を蹴飛ばす。


 壁を突き破り、会社外へと放り出された僕は即座に宙に足場を作り、体制を整える。


「多少はマシになったらしいが、まだ雑魚だな。端蔵の野郎に勝ったのはまぐれか?」


「うっせえ!」


 僕は左腕を振るい、火走りを五本放つ。

 千輝は僕同様宙に立ち、歯を剥き出すような笑みのまま、僕の火走りに向かい掌を向ける。


「ぬりい」


 掌に直撃すると同時だった。

 火走りは全て爆発。

 なのに、千輝には傷一つついていないのだ。


「一の指、火遊び!」


 僕は放った炎の玉と並走して、直接攻撃を狙う。

 千輝の背後に周り、卍蹴り。

 火遊びは先ほどと同じように防がれ、僕の蹴りも当然のように抑えられる。

 ここまでは予測済み。

 僕は右腕に巻いてある包帯を即座に解き、千輝の眼前へと投ずることによって目隠しとする。

 その隙に僕は抑えられた足を引き、包帯が外れて自由となった、龍傷から完全復活の右腕で羽団扇を抜刀。

 姿勢を低くして、太腿へと斬りかかる。


 しかし、その攻撃も千輝が足を上げただけで足背によって弾かれてしまい、無意味に終わる。


「何で僕を狙う」


「龍を殺したからだ」


「僕じゃない。柏崎景って奴が殺した」


「そうか、じゃあそいつも殺す」


 交渉は無理。

 普通に戦っても攻撃は通らない。

 ならば、防御不可能の攻撃を放つしかない。

 それならば、まずは広い地上に降りなければならない。


「ポールさん、人払い頼みます」


 そう言って、僕は宙を蹴り空高く。

 ビルの高さも超えて、追ってくる千輝から逃げるように更に宙を蹴り、移動。


 ポールさんも僕の目的と、移動先を察してくれたようで移動を開始したようだ。

 ポールさん、頼みましたよ


今回の話で、日暮れ古本屋は百話突破しました!

ここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございます。

このあと百話記念の閑話を投稿しますので、読んでいただけると嬉しいです。

少しメタネタな要素が多いので、苦手な方は本編には影響しないので飛ばしていただけると助かります。

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