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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
一章   古本屋篇
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九冊目

今回結構お話進みますよぉ〜

 宗介、これからよろしく。

 九尾苑さんは言った後にそう言えば話は変わるがと言い僕を指差す。


「宗介くん、気づかなかった僕が悪いとは言え君制服のまま寝れるなんて中々鈍いんだね、もうちょっと繊細な人間かと勝手に思ってたけどそうでもないみたいだ」


 あ、そう声が漏れた。

 そういえば僕は学校から一度家に帰って着替えずに散歩をしていた所でここにやって来たのだから格好は制服のまま、着替えなども当然持っていないのだった。


「流石にずっと着たまま洗ってない服でお客様の前に出すわけにはいかない、僕の服を持ってくるから少し座って待っていてくれ」


 言うと九尾苑さんは椅子から立ち上がり、部屋から書生らしい和風の服のセットと書生絣柄の羽織を持ってきた。


「僕が昔着ていた物なんだ、着付けは教えるから、しばらく大変かも知れないが覚えてほしい。

「すまないね、君が着ている制服のような洋風の着物は無くってね」


 そういえば九尾苑さんは黒い書生絣柄の着物を昨日も今日も着ている。

 好きなのだろうか、着物と書生絣柄。


「いえいえ、僕着物は結構好きなので嬉しいくらいですよ、自分で着れるくらいには一時期ハマっていました」


「なんと、それは趣味が合いそうだ」


 そう言うと九尾苑さんは椅子に座りお茶を一口啜る。


「僕は着る物もお茶も、どうにも極端に洋風の物は合わなくてね、ちょっと洋が入っている程度なら好きなんだけどもね」


 言い終えると九尾苑さんは僕に持ってきた服を手渡す。


「とりあえず着替えてくるといい、僕は朝食の準備でもしておくよ」


 九尾苑さんはお茶を勢いよく飲み干すと台所で朝食の準備を始めた。

 僕は一度頭を下げてありがとうございますと言ってから部屋に戻り着替える。


 着方は知っていたが実戦は初めてなので少しもたついた。

 しかしサイズは丁度いい。

 それに思っていたよりも動きやすい。


 先程まで話していた部屋に戻ると九尾苑さんが握り飯を作っていた。


「着替え終わったんだね、似合ってるよ」


 言うと九尾苑さんは、僕が着替えている間に作ったであろう大量の握り飯を風呂敷に包む。


「悪いけど今から出かけるよ、羽団扇を持ってきてくれ」


 そう言われた僕は、駆け足でもう一度部屋に戻り羽団扇を持ってくる。

 戻ってくると九尾苑さんは、昨日天狗を切った仕込み杖と、握り飯を包んだ風呂敷を片手に持って茶を啜っていた。


 それじゃあ行こうか。

 九尾苑さんはそう言うとお茶を飲み干し、茶飲みをテーブルに置く。


 僕は九尾苑さんが何をするつもりなのかが全く分からず質問しようとするが、寸前で九尾苑さんの声に遮られる。


「どこに行くか聞こうだなんて、無粋なことしないでくれよ」


 言うと九尾苑さんは台所の一番右の少し長い棚を開ける。

 すると、そこには底の見えない程長い階段が伸びていた。


「こんな朝早くに悪いけど、今かは君には運動をしてもらうよ、着いておいで」


 唐突な言葉だった。

 僕は一瞬頭の中がクエスチョンマークで埋まるが既に階段を降り始めた九尾苑さんに気づいて慌てて追いかける。


 とりあえず今は着いていくしか無い。

 そう自分に言い聞かせて九尾苑さんに追いつくと九尾苑さんは、昨日羽団扇の炎を吸い込んだ火の玉を灯りにして僕を待っていた。


 九尾苑さんとの会話は一切無いまま階段を下り続けていると、三時間程経った頃に突然九尾苑さんの足が止まる。


「着いたよ、目的地だ」


 僕はゼエゼエ息を切らして肩を上下に揺らしながら、階段を歩いている間は足元のみに向けられていた視線を前に向ける。


 するとそこには、これまた端の見えない広い空間が広がっていた。


「さあ、運動しようか宗介くんや」

祝!

10000文字突破!

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