プロローグ
未熟ですが、よろしくです
周囲は暗くなり、星と月が町を照らしている。
「流れ星だ」
誰かが言った。見上げれば、確かに流れる星をいくつも見ることができた。
「何か願ったか?」
声に、騎士の少女は隣を見る。居るのは騎士団の先輩だ。
女性の騎士は、それだけでも稀有な存在だが、彼女は特にだ。
領主の娘、姫に当たる人物の推薦で、平民から騎士になった、かなりイレギュラーな存在である。
「いえ、自分の願いは、星に託すものではありませんから」
金髪の少女は、気の強そう黄金の目で、空を睨み付けながら言う。
先輩騎士は、肩を竦めながら嘆息した。
「私は」
そんな中、少女は絞る様に声を出す。
「私はただ強くある。何者にも負けないほど。……それが、それだけが私の望みだ」
それは自らに言い聞かせる様だった。同時に、過去へ向き合おうとしている様でもある。
騎士の弱さは罪だ。
彼女は過去にそれを知った。
「俺は願った」
「何をですか?」
その問いに、先輩騎士は答えなかった。
だが、少女も訊こうとしない。
尋問でもないのに、答える気の無い者から聞き出すのは無粋だ。
「まだ……寒いな。春なのによ」
「そうですね」
夜風はまだ冷たく、輝く星は銀の光を放ち続けていた。
まだ、夜は長そうだ。
二人の騎士は、歩き続けた。夜風の中を。
――強くあろう。国の為に。姫の為に。
そして、あの人の為に。 騎士は歩き出した。先行きは長く、遠いだろう。
だが、完全な停滞は許されはしない。それが許されるのは、全てが終わってからだ。
「この私、アルセリア・クライの終わりは、何処なのだろうな」