Ⅸ ~不備~
神発暦1220年
≪さてと、とりあえず、どこにしようかな?≫
ライは獲得?したリッチの収納先を選んでいた。
≪うーん、衛星モーナットは一番よくわからないからパスしておこう。一番無難な固有魔法結界の中でいいか≫
ライがそう思うと、
〔ピコッ〕
〖【エンペラー・ブレイズ・リッチ】を固有魔法結界に長期保存します。のこり空間率は99.8%です〗
≪よし、とりあえず。これで一難は去ったってことでいいのかな? あいつが何か言って偉大なる主様?とかいうのは気になるけど、考えたところでどうにかなるわけでもないしな≫
ライがそう思っていると、
「ガゥッ」×5
ビクッ!
≪なんだぁ?≫
ライは突如の鳴き声に驚き、鳴き声の方向を確認すると、
≪これは......どういうことだ?≫
ライの目線には、ライに対して頭を垂れるようにしている兄弟たちの姿があった。
≪意思疎通の方法がないのが辛いな...≫
ライは現在の状況はなんとなく、理解は出来ているがやはり確証がどうしても取れないため、どうしようかと悩んでいると、
〔ドスン!〕
後方に親竜が現れる。
「グルゥ?」
親竜はいったい何が起きたのかと、困惑しているように思えた。
≪どうすりゃいいのかな?恐らく、さっきのリッチの魔法とか兄弟たちの火炎の音で帰ってきたんだろうけど......≫
現在の巣の周りは、兄弟達の火炎やリッチの魔法によって木々が少し焦げただけで、親竜がやってくる原因となった魔物はすでにここにはいない状況であった。
ライはどのようにすれば、この状況が伝わるのか困惑していると、
「ギャゥッ」×5
「グァ?」
「ギャゥギャゥ」×5
「ガルゥゥゥ!」
≪えっ!? 会話ができるのか?≫
ライは突如として始まった親竜と兄弟たちの会話に驚きを隠せなかった。
≪会話ができるのか......確かに獣同士でも鳴き声で意思の疎通は出来そうだけど、俺には全く何を話しているのか理解できない。この差は俺がアルビノだからというよりも人間の生まれ変わりだからだと思うほうが適切なのかな?≫
親竜と兄弟達の会話はそれからすぐに終わった。
「グウゥオオオオオオオ!」
すると、突如として怒号を上げた親竜は天高く飛び立った。
≪兄弟達がさっきのリッチのことでも伝えたんだろうか?≫
ライはそう疑問に思いながらも、とりあえず休もうと思い巣に着地した。すると、再び兄弟達が頭を垂れる。
≪うーん、感謝の印なんだろうけど.....とりあえず、なんか気まずいし横になろう≫
ライは現実逃避するように目を閉じて横になった。
そして、先ほど自分の身に起きた不思議な出来事について考察を始めた。
≪突如として出てきたゲームのような表示、わけのわからない選択肢。今までいろんなそれっぽい言葉を使っても出てこなかったのにいきなり出てきたのには何か条件でもあるのだろうか?≫
ライはどのようにすれば先の出来事を再現できるのか考えていた。
≪もしかして、ちゃんとあのウィンドウに書かれていた名前で呼び出さないと出てこないとか、ありそうだ。オープン・固有魔法結界≫
ライがそう心の中で唱え、閉じていた片目を開けて確認すると、
〔ピコッ〕
〖固有魔法結界を開きました。以下から選択してください。
・召喚
・解放
・吸収〗
≪選択肢か……なるほど≫
ライは目の前に出てきた選択肢を見て、自身の能力の考察をした。
≪解放があるってことは、この召喚ってのは、ただ出現するだけじゃなくきっと命令を与えることでもできるんだろう。
とは言え、召喚を試すにはあの黄金の炎とリッチの二択な訳か……ここではちょっと試せないな≫
詳しい情報がないまま、召喚を行って自身の思い通りにならなかったときのことを思い、すぐに召喚はしないことにした。
≪問題はこの吸収ってやつだな、言葉の意味そのままなら、俺の体の中に蓄えるってことだよな≫
ライはそう思案するとともに、疑問が芽生えた。
≪蓄えたらどうなるんだ?……ゲーム見たいにパワーアップでもするのか?≫
ライのこの疑念はだんだんと、試して見たいという欲求に変わっていった。
≪まぁ、あの黄金の炎なら試してみても大丈夫だろう≫
ライは結局自身の欲求に耐えきれず、試してみることにした。
〔ピコッ〕
〖吸収が選ばれました。以下から選択してください
・【最上位火炎魔法・ソー・フレイム】
・【エンペラー・ブレイズ・リッチ】〗
≪ソー・フレイムで≫
〔ピコッ〕
〖最上位火炎魔法・ソー・フレイムが選択されました。吸収を開始します〗
ライは最上位火炎魔法・ソー・フレイムを選択した。
≪これで何らかの変化が起きるはず……?≫
ライが吸収を選択したから体感で数分待ったが何も感じられなかった。
そして
〔ピコッ〕
〖最上位火炎魔法・ソー・フレイムの吸収が完了しました〗
≪えっ?!≫
そこには、思いもよらぬ文字が記されていた。
≪まてまて、おいっ!、え?≫
ライはあまりの出来事に困惑していた。
≪こう、何か起きるものだろう普通、吸収だぞ、あの炎を取り込んだんだよな。それなら少しくらい変化を感じられるものだろう≫
ライは見るからに強力そうな魔法であったソー・フレイムを吸収したにも関わらず自身の体になんら変化を感じなかったことに憤慨した。
≪くそっ!、当てが外れた。こんなことなら保存しとけばよかった≫
ライは自身の苛立ちが残ったまま、その日を終える。