実は。
私の前の席がちょうど空いてたから、そこにロッカを座らせる。
「なんだかこの机でかいんだけど。」
「この年季の入り様からして私のために誂えた、ってわけでは無さそうだけど………………高かった? 」
「ん、別にいいや。」
そう言うと、ロッカは私の置いたお弁当の包みを解き始める。
「先に食べててもいいわよ、私はアカリンの様子見てくるからっ。」
そう言い残して、机に突っ伏したままのアカリンの様子を見にいく。朝は何とも無さそうだったけど、二時間目が始まったあたりからなんだかだるそうにしてて、ちょっと気になってたのよね………………
「アカリン、アカリン………………?大丈夫? 」
「………………んぁ、みことっち………………? ごはんかってきた………………? 」
「残念でしたっ、ミコトじゃなくてわたしよ。」
「………………んぁ、アルマっちかぁ………………なにか、よう?」
「用って程じゃないのよ、ただ、アカリンがなんだかぐったりしてるから気になって………………」
「………………あー、これ? 大丈夫だから、心配しないでー………………」
少し視線をあげて軽く手を左右に振ってみせるけど、なんだか顔色も悪くて、
「辛い時に嘘つかなくてもいいのよ? 保健室連れてってあげよっか?」
「いや、ほんとに大丈夫だって………………」
アカリンったら無理して………………私に心配かけさせたくないってのは分かるけど、それよりも自分のことを心配してよ………………
「ただいま〜………………あ、凛ちゃんおかえり。」
「あ、ミコト、おかえり。………………ほらアカリン、ミコトが帰ってきたよ。」
「ごはん?」
あ、アカリンが生き返った。
「もー、明梨ちゃんったらご飯のことばっかり………………ほら、お腹に優しそうなパン買ってきたよ。」
「ありがと尊っち。お金は後で払うよ。」
「もうっ、そう言って払ってもらった試しがほとんど無いんだけど?」
「えー、この前ちゃんと返したじゃんかー。」
ビニールを解くのももどかしそうに、アカリンがあんぱんにかじりつく。あっという間に食べ終わったアカリンは次のパンに手を伸ばして、
「あっそのカツサンド私が食べようと思って買ってきたのにぃっ!?」
「へへーん、尊っち、こういうのは早いもの勝ちだよっ」
「むー、明梨ちゃんの食いしんぼっ!!」
そんなやりとりについていけずにぼーっと見ていると、
「………………あ、アルマっち。心配してくれてありがと。実言うと、お腹すいてたからあんなにぐでーってしてただけなんだ………………私ってさ、元気な時はよく食べるんだ。んでもってガス欠になるとまたぐでーってなって、その繰り返し。だから、明日っからまたぐでーってなってても、『あ、お腹空いてるんだなぁ』ぐらいに思っててくれていいから。………………ホントにマズい時にはお願いしたいけど、いつもは相葉っちとか、尊っちが居るから………………」
「そーお?それなら良いんだけど………………朝ごはん食べてから2時間ぐらいでまたお腹空いちゃうの?困らないそれ?」
「朝弱いからそんなに詰め込めないんだよねー。確かに困るっちゃ困るけど………………スナック菓子ってなんか苦手だし。」
「そう、なら明日っからおにぎりでも作っといてあげようか?」
「い、いやいやいやっ、アルマっちにそこまでやってもらうのは………………」
「あら、気にしなくたっていいのよ、アカリンが辛そうにしてるの、見てる方も辛いから。」
「そ、そう………………………………でも、アルマっちにそこまでしてもらっても、私に返せるものなんてないよ?」
「あら、私は見返りがないと動かないように見える? ………………対価は、アカリンの元気な姿じゃダメ?」
「………………そ、そんなのでいいの? なら、おねがいし」
「私が作るよっ!!」
いきなりミコトが会話に割り込む。
「………………私が、明梨ちゃんのおにぎりを毎日作ってあげる。」
「………………みことっちが? 」
「………………私も、明梨ちゃんが辛そうなの見てらんないから。」
「そ、それはいいんだけど………………尊っち朝早いのに大丈夫? あと、尊っちっておにぎり握れるの? 」
「むーっ、バカにしないでよ明梨ちゃんっ!! おにぎりぐらい作れるよっ!!………………もっと明梨ちゃんの役に立ちたいんだもん………………」
「み、尊っち………………………………ありがと。」
ほんのりとほっぺたを赤くした2人を生暖かい目で見守る。………………うんうん、仲良しだね。
「………………あ、あと凛ちゃん。明梨ちゃんがぐでーってしてたの、お腹が空いてたのもそうだけど、実はね………………」
「わー!? みことっちー!?」
「………………一時間目に帰ってきた小テストが散々だったからだよー。」
「み、尊っちの裏切り者ー!! だ、大体そう言う尊っちだってバツばっかりだったじゃんか!?」
「ば、ばらさなくてもいいでしょっ!? それに、半分はできてたからセーフだよっ」
「いや、私から見たら2人ともアウトだと思うけど………………」
「………………いや、アルマっちと比べちゃいけないでしょ………………」
さっきの雰囲気はどこにやら、一転して2人とも暗い顔になる。
「………………………………2人とも、放課後に私の部屋で補修ね?」
「………………………………はーい」
………………あら? なんだか忘れてるような………………まぁいっか。