表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

手を引いて。

お昼休み、なおも群がってくるクラスメイトをやっとこさ振り切って、ロッカの待つ隠れ家に足を運ぶ。

「ロッカぁー………………あれ? いない………………」

椅子の隙間からひょこっと覗いてみるけど、ロッカの姿はそこには無くて。………………トイレかな? でも、いつもなら置いてあるロッカのカバンもないし………………

「………………凜? 」

後ろから聞こえてきた声に振り向くと、

「………………あぁ、ロッカ。そっちに居たんだ。」

「蘆花だっての………………ん、まぁね。たまにはホームルームの時から授業出てないと、居ないものとして扱われちゃいそうだし。………………元からサボってるけどさ。」

「あら、自覚があるなら毎日授業出れば? 」

「断る。………………大体さ、英語なんて覚えたところで何になるって言うんだ? 他のは、それなりに役に立つかもしれないけどさ………………」

「ほらほら、そんなこと言わないのっ。………………ところで今日もお弁当作ってきたけど、食べない? 」

「食べる。」

即答された。ロッカもだんだん、私のごはんにメロメロになってきてるみたい。

「そう、なら待ってて、すぐに広げるから」

「あぁ、待った。………………ここで食べるのもいいけどさ、たまには別のところで食べない? 」

「あら、どこかいい所知ってるの?」

「………………………………凛、どこかいい所知らない? 」

思わず力が抜ける。………………の、ノープランなのっ!?

「………………なんで私任せなの? 」

「………………よくよく考えたら、この学校の中のせまっこい隠れ家しか僕知らないや。」

「んもう………………ならもう、ここでいいじゃない? 」

「それはヤダ。」

あっさりとロッカが即答する。

「………………………………ちゃんとさ、凛と落ち着いてご飯食べたいもん。」

………………おや? ロッカ、なんで目ぇ逸らすの?

「別にここでも落ち着いて食べられそうだけど………………」

「いや、僕みたいなチビならまだしも、凛の場合天井に頭ぶつけそうでしょ? そんなちっちゃくなって食べさせるのも、なんだかかわいそうだし………………」

「はぁ………………ロッカ、それ、もうちょっと前に気がついて欲しかったんだけど………………」

最初に来た時、髪の毛にクモの巣が絡んで取るの大変だったんだから………………

「んで? どこにしよっか。」

「ロッカの好きなとこでいいよ。………………あ、でもトイレの中とかは嫌だよ? 」

「さ、流石にそれは僕も嫌なんだけど………………うーん、どこがいいか………………」

「そう、ねぇ………………」

つい天井を眺めて、ふと教室でのことを思い出す。さっき教室から出る時、レイがバスケットを持ってどこかに行こうとするのが見えて、思わず『レイちゃん、それなぁに?』って声をかけたの。そしたら、『今日はお天気もいいからハチコとクーのおさんぽ』って言われて、『いってらっしゃい』って返したんだっけ。………………あ、そうだ。

「そうね、ちょうどお天気もいいし………………中庭でご飯なんてどう?」

「中庭かぁ………………まーたツナギの用務員に追っかけ回されそうだなぁ。」

「あらあら、よっぽどトラウマなのね。」

「だってあいつ早いんだもん、チラッと見えて、やべぇ逃げないとって背を向けた時には、すぐ後ろにたってて………………ありゃあ人間じゃないって………………」

「散々な言いようね………………中庭がダメなら、いっそ4組に食べに来る?」

「いや待て。流石にそれは………………」

「あら、大丈夫よ。今はみんな食堂に食べに行っちゃってるだろうし、残ってても数人よ。」

「そうじゃなくて………………いいのか? 凛が、僕みたいなのと一緒にいるとこを見られて………………」

「へ? 」

思わずきょとーんとしてロッカのことを眺める。

「………………ロッカったら、今までそんなこと心配してたの? 」

「そ、そりゃあ………………」

「………………ロッカって、ヘンなとこ気にするのね。 私なら大丈夫よっ。それに………………まぁいいわ。ついてきなさい」

お弁当を畳むと、ロッカの手を引いて階段を降りていく。

「わ、ちょっ、待てよりんっ」

「待たないわよ。待ったらロッカ、逃げ出すくせに。」

「逃げないって………………」

「ふん、どうだか。」

さて、と。4組の前まで来たわね。

ロッカを引きずり込もうと教室に足を踏み入れると、向こうからも誰かが教室を出ようと向かってきて、

「あら失礼。」

「おっとっと………………チョーコちゃんもご飯?」

「ええそうよ、そっちは………………まだ食べてないみたい? 」

私の手に持ったお弁当箱の包みをちらっと見てチョーコちゃんがほほえ………………いや、『ほくそ笑んだ』。後ろでロッカが後ずさるのを感じる。………………中身はいい子なんだけど、ねぇ………………

「そうなの。ところで、他のみんなは? 」

「さぁ………………?他は安栗さんがそこでスヤスヤ寝てるぐらいだけど。」

「アカリン寝不足っぽかったけど、まだ寝てたんだ………………まぁいっか。じゃあね、チョーコちゃん。」

すれ違った後にロッカの方を振り向くと、ぺたーっと床に座り込んでいて。

「………………もしかして、腰抜けた? 」

「あ、あの笑い方は絶対世界征服企んでるって………………」

「大袈裟………………とも言えないわね、あながち………………」

………………ほんとに、中身はいい子、なんだけどねぇ………………

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ