お招き。
今日は蘆花サイド
凛の言う通り、放課後を見計らって昇降口に立つ。程なくして、凛がカバンを抱えて階段を降りてくる。
「………………なんだ、来たんだ。」
「来たんだって………………………………凛の方から誘ったんだろ? 」
「いや、すっぽかすと思ってたから。一応、昇降口を見て居ないのを確かめてからいつもの所行こうかなーって思ったのに、ちゃっかりロッカが居たから驚いちゃった。」
「やっぱ帰っていいか? 」
とことん信用されてない様子に呆れて、足早に立ち去ろうとする。けど、
「はい、ダーメ。………………もう一回一年生やりたくないでしょ? きちんと教えてあげるからっ。」
「………………おい凛………………さっきから勝手なこと言ってるけどなぁ………………そういう凛自身は勉強どうなんだよ? これで自分も出来ないとか言うなよ?」
「………………それは大丈夫、アルマっちは、勉強できる方。私が保証する。」
「んお? 」
聞きなれない声に反応して振り向くと、そこに居たのは、
「………………誰だあんた。」
「あー、この子は私のクラスメイトのアカリン。本名は安栗ちゃんだったかな? この子も授業休みがちだからさ。………………実言うと、この子のついでにロッカのことも教えようかなって思いついたの。」
「な、なんだよ………………ボクはオマケかぁっ!?」
「はいそこ、拗ねないのっ。ちゃんと7時前には帰すし、終わったらごほうびもあげるから。」
「………………ちぇっ、わーかったよ、もう………………」
ごほうびと言われるとどうもボクは弱いんだな、これが………………
「さ、案内するわ。途中でスキを見て逃げ出そうなんて考えないで、ちゃんと付いてきなさいよ?」
そう言うと、凛はさっさと長いコンパスで歩いていく。慌てて靴を履き替えると、ボク達もとっとことっとこ付いていく。
「………………………………なぁ、クラスメートってとこで聞くけど、凛ってクラスだとどうなんだ?」
安栗とか言うクラスメートにヒソヒソ声で話しかけると、ちょっとムッとしたように、
「………………アルマっちはいい人。たまにおやつとご飯をくれる。あと、具合悪くなった時に背中貸してくれる。………………………………あと、胸が羨ましい。」
最初の方はべた褒めだったのに、最後だけちょこっと恨み妬みが混ざる。………………この脂肪の塊のサイズでそこまで悩むか?ふにふに。
「さ、ここよ。」
ちょっと豪華な階段を登ると、とある部屋の前で凛が立ち止まる。鍵を開けてボクたちを招き入れると、後ろ手にドアを閉めた。
………………これが、凛の部屋………………
「ふわぁ………………」
隣で安栗も間抜けな声を出して見とれている。………………ん、くんくん、何だかいい匂いが………………
「ほらほら、そんなとこに突っ立ってないでそこに座りなさいな。早速始めるわよ。」
「アルマっち、あそこにあるぬいぐるみってアルマっちが作ったの? あと、さっきからいい匂いがするんだけど。」
「そうね、ここにあるキルトとかぬいぐるみは大体私が作ったものよ。あと、この匂いはハーブね。入り口のところにレモングラスを吊るしてあるの。」
部屋のことを褒められたからか、ちょっとだけ上機嫌な凛。ルンルンと鼻歌を歌いながら紅茶をいれてくれる。
「えー、紅茶ぁ?ジュースないの?」
「お客さんの分際で態度がでかいわよ?………………それに私はジュース飲まないもの。流石に出されたら飲むけど、『わたしの国』では水が最高の贅沢品だもの。」
「あ、そっか。アルマっちって砂漠の方の生まれだったよね。だから教室でミネラルウォーターを大事そうに飲んでるんだ。」
「ええ、この国の水って美味しいからね。」
………………ふぅん、凛ってそっちの生まれなのか………………それにしてもジュース飲まないとか、ボクには信じられないなぁ。手持ち無沙汰になってごろんと寝っ転がって天井をあおぐと、凛の勉強机の下に目がいく。………………………………ん?あれは………………
「………………ちょっとロッカ、どこ行くの?」
「………………ねぇ凛、ジュース飲まないって言ったよね。………………………………ならさ、なんでここにサイダーの空きペットボトルが転がってるの?しかも大きいの。」
あ、目を逸らした。つられて安栗もじとーっと凛を見つめる。
「………………し、仕方ないじゃない………………………………サイダーってしゅわっとして美味しいんだもん………………そ、それにサイダーとかラムネって天然水から作るからセーフだもん!!」
あ、凛が壊れた。
「ロッカ!! アカリン!! ………………い、今見つけたものは黙ってて!?」
安栗の方はコクコクとうなづくけれど、
「んー、どうしよっかなぁ?」
ニヤニヤと薄笑いを浮かべる。
………………これは大きな交渉カード手に入れちゃったぞぉ?