戻ってきて。
「………………って感じだったよね、最初は。」
ごはんに箸をつけつつ、隣にいるロッカに話しかける。
「ん、そういえばそんなこともあったね。………………あ、凛。この卵焼き次からもうちょい甘めでお願い。」
「はいはい、承りましたよっと。」
次はお砂糖を多めに、と心のメモに書き加えておく。
「そういえば聞いてなかったけど、いつからここに引きこもってるの?」
頭のつっかえそうな天井を気にしながらロッカに尋ねると、
「入学して1ヶ月もしないうちかな。最初は屋上に逃げようかと思ったんだけど鍵かかってたし。それから中庭に行ったら、あの用務員に追いかけ回されたし。その次にトイレこもったら、隣に入ってくる人の気配やら何やらで集中できなくてさ。………………んで、ぶらついてたらここに行き着いたってわけ。」
「ふぅん。………………そういえば、お昼はどうしてるの? 私がお昼持ってくるまでは………………もしかして、何も食べてない? 」
「ん、その点は大丈夫。」
と、そばに置いてあったバッグを開けると、出てくるわ出てくるわ、ポテトチップスやらコーラやら………………
「食料はきちんと確保してあるからさ。」
「こんな不摂生なものばっかり………………そんなんだからおチビさんなままなのよ?」
「おチ………………うるさいなぁ、でかい凛には言われたくないっての。………………あ、タコさんウインナーもらいっ。」
私のお弁当箱からウインナーが消える。あえて黙認してるけど、持っていかれるおかず次第では私も応戦する覚悟がある。
「………………はぁ。私だって好きでこんなにおっきくなった訳じゃないのよ?大体ねぇ、この身長だと着れる服も」
「はいはい、わかった、わかったから………………頭の上でキャンキャン叫ばないでよ。ここがバレちゃうだろ?」
「あっ………………ゴメン。」
慌てて口をつぐむ。ロッカは、ハァとひとつため息。
「………………そう言えばさ、ロッカは授業サボってばっかだけどほんとに大丈夫なの?」
「まぁね。教科書を一目見れば大体のことは覚えられるし。」
「なにそれすごい。じゃあ試験とかも全パス? 」
「き、基本はね………………ただし英語、貴様はダメだって感じ。」
「ふーん。………………There are things that you are not good as well.」
「おわっ!?………………い、いきなり英語とかやめろって、頭が壊れる。」
「元から壊れてそうだけどね。」
ロッカの頭をつんつんする。
「し、失礼だなぁ………………これでも頭いいんだぞ?ホントだからな? 」
「じぃー………………………………」
「う、疑ってるのか!?」
「そりゃあもちろん。………………まぁいっか。来週の期末試験の結果を見ればホントかどうかわかるし。」
「………………………………おいちょっと待て、今なんつった?」
「結果を見ればホントかどうか」
「その前!!」
「そりゃあもちろん」
「いや行き過ぎだって!!」
「………………………………来週の期末試験? 」
「それだ!!………………ま、マジで? ほんとのマジのガチのリアルな方で来週が期末試験?」
「いえす、ざっつらーいと。」
「マジかよ………………………………道理でみんなピリピリしてると思った。………………な、なぁ、試験範囲とか何か言ってた?」
「そんなの私に聞かれても分かんないよ。………………4組と2組だと違うかもだし。」
「いや本質は同じでしょ。………………あー、いいやもう、またヤマカンで………………」
「ダメよ。………………………………まったく、しょうがないんだから、もう………………」
一ヶ月ぐらいお昼ご飯を共にして気がついたことは、ロッカはとんでもなく面倒くさがりだってこと。あと、オシリに火がついても「あーめんどくさ」で気にしないタイプだってこと。
………………こんなの、ほっとけるわけないじゃない。
「………………ロッカ、ホームルーム終わったら下駄箱んとこに集合、いいね?」
「はぁ? なんでよ?」
「そんなの決まってるじゃない。」
何を今更、といったように呆れる。
「………………私の部屋にロッカを缶詰する。」
「………………………………は、はぁぁぁぁ!?」